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相続した不動産売却の流れは?税金の種類・活用できる特例を紹介

相続財産に不動産が含まれる場合は、相続人の間でどのように分割するのか決めなければいけません。売却して現金で分割するとしても、まずは誰かが相続し、売却手続きを取る必要があるでしょう。不動産の相続や売却には税金なども発生します。できるだけ税金を抑えて公平な分割を行うために、制度を理解しておきましょう。

相続した不動産を売却するときの流れや、かかる税金の種類、利用できる特例などについて解説します。

相続から不動産売却までのプロセス

不動産売却

相続財産に不動産が含まれるときは、まず不動産の相続をして、その後、希望に応じて売却手続きを行います。具体的なプロセスを7つのステップに分けて見ていきましょう。相続も不動産売却も手間がかかる作業ですから、慌てず、ひとつひとつ着実にこなしていくことが大切です。

1.遺言書が存在するかを確認する

親族が亡くなったときは、まず遺言書の有無について確認しましょう。遺言書には、以下の3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

このうち、公正証書遺言は、最寄りの公証役場の遺言検索で探せます。また、法務局に自筆証書遺言を預けているかどうかは、法務局への交付請求で確認できます。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、自宅の引き出しなどに保管されていることもあるので、探してみましょう。ただし、自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけても開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という手続きを行わなければならないと定められています。

検認手続きには相続人が立ち会う必要があるため、誰が法定相続人になるのかも確認しておきましょう。なお、全員そろわなくても検認手続きを行うことは可能です。

2.遺産分割協議を行う

遺言書の確認ができたら、法定相続人が集まって遺産分割協議を行います。

遺言書があった場合でも、遺言書通りの分割で良いかどうかの確認が必要ですし、なかった場合は誰が何を相続するのかを決めなければいけません。

遺産分割協議には、法定相続人が全員出席する必要があります。全員が合意できる遺産の分割方法を相談して、遺産分割協議書を作成しましょう。

なお、遺産に不動産が含まれ、相続人が複数いる場合は、以下のいずれかの方法で分割を行います。

  • 現物をそのまま分ける(不動産Aは配偶者、不動産Bは子どもなど)
  • 不動産を売却して売却代金を分割する「換価分割」を行う
  • 法定相続人のひとりが代表して相続し、残りの相続人には分割した場合相当の現金などを与える
  • 不動産を共有名義にして相続する

3.相続登記を行う

不動産を相続する人が決まったら、不動産の名義を亡くなった方から相続人に変更します。相続する不動産がある地域の法務局で手続きを行いましょう。法務局での登記は予約制ですから事前に連絡しておいてください。

なお、不動産を売却して売却額を分割する場合でも、亡くなった方名義のままでは売却できないため、代表者を決めて名義変更を行います。遺産分割協議書に換価分割について記載しておくことで、あくまでも分割のための名義変更と相続登記であることを証明できます。

4.相続税を申告する

相続財産の合計額が一定を超えると、申告が必要になります。申告が必要なラインは、法定相続人の数等によって決まります。詳細は後程詳しく解説しますので、そちらを参考にしてください。

なお、不動産が相続財産に含まれる場合は、固定資産税評価額や路線価などから評価額を算出します。実勢価格や購入価格ではありませんから気を付けましょう。

相続税の申告は、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行います。申告先は、亡くなった方が住んでいた地域を管轄する税務署です。

5.不動産の査定・媒介契約を締結する

相続した不動産を売却する場合は、不動産会社と媒介契約を結んで買い手を探してもらわなければいけません。

適切な価格で売却してくれる業者を探すために、不動産の査定を受けましょう。複数の業者の査定額や査定時の対応、査定内容の説明などを比較して、媒介契約を結ぶ不動産会社を選定します。

なお、媒介契約には、複数社と契約できる「一般媒介契約」、1社にのみ依頼する「専任媒介契約」、売主自身で買主を探すこともしない「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、希望に合った方法を選びましょう。

6.不動産を売却する

契約する不動産会社が決まったら、売却活動を開始します。宣伝や購入希望の方とのやり取りなどは不動産会社が行ってくれます。相続した物件は空き家のはずですから、内見の立会も必須ではありません。

専任媒介契約や専属専任媒介契約の期間は3ヵ月ですから、物件の売却にかかる期間もおおよそ3ヵ月が目安となります。売却額で相続税を支払う予定の方は、納期限に間に合うように売却を進めてください。

買い手が決まったら、不動産会社を通して決済手続きや不動産の引き渡しなどを行います。必要な書類や手続き内容は、不動産会社から案内してもらえます。仲介手数料の支払いが必要になるので、用意しておきましょう。

7.必要に応じて確定申告を行う

不動産を売却して利益が出た場合は、所得税や住民税が課税される可能性があるため、確定申告をしなければいけません。

なお、亡くなった方が一人で住んでいたマイホームを相続した場合、要件を満たす形で売却すると譲渡所得から最高3,000万円までを控除できます。また、亡くなった方と自分が住んでいた家を売るのであれば、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除が利用できる可能性もあります。

ただし、これらの制度を利用すれば税金がかからないという場合でも、確定申告は必要です。売却した年の翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に申告を行いましょう

不動産売却・相続時にかかる税金

不動産を相続、売却した場合、さまざまな税金がかかります。ただし、状況によっては税金が課税されないこともあります。どのようなときに、どんな税金がかかる可能性があるのかをまとめました。

相続税

相続税は、相続した財産の総額にかかる税金です。不動産だけでなく、現金や有価証券など、幅広い財産の評価額の合計に対して課せられます。ただし、相続した財産の合計額から、葬式にかかった費用や、仏壇などの非課税財産、亡くなった方が抱えていた債務などはあらかじめ差し引きます。

相続税には基礎控除として、以下の金額が定められています。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

たとえば、ある人が亡くなって配偶者と子ども2人がいた場合、法定相続人は3人です。

3,000万円+600万円×3=4,800万円

よって、相続財産が4,800万円以内であれば相続税はかかりません。

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権の移転登記を行う際に必要な税金です。法務局で名義変更をする際に納付しましょう。税額は固定資産税評価額の0.4%です。

ただし、不動産の評価額が100万円以下であれば、令和7年(2025年)3月31日まで登録免許税が免税されます。

印紙税

相続した物件の売却に際しては、不動産売買契約書を作成します。不動産売買契約書を作成する際は、契約金額に応じた印紙税を貼付しなければいけません

令和6年(2024年)3月31日までに作成される不動産売買契約書については、印紙税の軽減措置が設けられています。具体的な印紙税額については、売買契約書の作成を行う不動産会社に確認しましょう。

なお、前述の登録免許税も、登記申請書に収入印紙を貼り付けることで納付します。

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却した際にかかる所得税と住民税の総称です。正式な税金の名称ではありませんが、両者をまとめて譲渡所得税と呼ぶことがあります。

税率は、所有期間が5年以下の短期譲渡所得か、5年超の長期譲渡所得かで変わります。

  • 短期譲渡所得……所得税30%、住民税9%
  • 長期譲渡所得……所得税15%、住民税5%

相続で取得した不動産については、亡くなった方が取得した時期を基準に、短期譲渡所得か長期譲渡所得かを判断します。相続した日から数えるわけではありません。

復興特別所得税

復興特別所得税は、令和19年(2037年)までの期間限定で課せられる税金です。東日本大震災からの復興財源を確保するために設けられています。

復興所得税の税額は、所得税額の2.1%です。所得税を算出した後、2.1%を掛けて算出します。なお、納付は所得税とまとめて行います。

相続した不動産の売却に活用できる2つの特例

相続した不動産が高額で売却できると、その分税金も多額になってしまいます。そこで役立つのが、税金の抑制につながる特例制度です。不動産売却時の特例には複数の種類がありますが、本記事では、特に相続した不動産を早い段階で売却した場合の特例2つを紹介します。

1.取得費加算の特例

相続不動産を一定期間内に売却すると、相続税の一部を売却した不動産の取得費とみなせる特例です。売却期限は、相続税の申告期限の翌日から3年以内です。

不動産の売却にかかる税金は、譲渡所得の額に応じて決まります。相続税を取得費に算入できれば、その分譲渡所得額が減り、税額も抑えられます。以下の書類を添えて確定申告を行いましょう。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

なお、取得費に加算できる相続税額は、売却する不動産に対して支払った相続税のみです。

2.相続した空き家の3,000万円特別控除

亡くなった方が住んでいた空き家を相続して、令和5年(2023年)12月31日までに売却した場合、要件を満たすと譲渡所得額から最高3,000万円の控除を受けられます。

対象となるための主な要件は以下の通りです。

  • 昭和56年(1981年)5月31日よりも前に建築された戸建てマイホーム
  • 相続の直前まで亡くなった方がひとりで住んでいた
  • 相続から売却までの間空き家になっていて利用されていない
  • 耐震基準を満たす家である、または家を壊して更地にして売却する
  • 相続開始から3年後の年の12月31日までに売却する
  • 売却代金が1億円以下

詳細な要件は状況によって変わる場合があるので、税務署に確認しましょう。

相続した不動産を売却する際の注意点

相続した不動産の売却は、自分が購入した不動産の売却に比べて「どういう物件なのか」を十分理解できていないことがあるでしょう。しかし、不動産の詳細がわからないまま売却手続きを進めると問題が起こることもあります。相続した不動産を売却するときに気を付けたい注意点を紹介します。

取得費が不明確だと損をする

通常、不動産を売却したときは、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得額を算出します。

ところが、相続した不動産を売る場合は、正確な取得費がわからないこともあるでしょう。このような場合は、譲渡金額の5%を概算取得費として計算することになります。

たとえば、1,000万円の不動産であれば、50万円です。かなり昔に取得したものであれば可能性はゼロではありませんが、多くの場合、実際の取得費よりも少なくなってしまうでしょう。

購入当時の通帳などを確認してもわからない場合は、市街地価格指数などを用いて取得費を推計することもできますから、検討しましょう。

不動産売却後に契約不適合責任を問われるリスクがある

不動産の状態がよくわからないまま売却してしまい、その後問題が発覚すると、契約不適合責任を問われる可能性があります。

たとえば、物件に瑕疵があるにもかかわらず、売主に説明を行わず、売買契約書にも明記されていなかった場合、補償を求められるかもしれません。このような状況を回避するためには、あらかじめ不動産の状態を調査し、正しく把握する必要があります。

個人が目視で確認するだけでは気づけない問題もありますから、専門家に調査を依頼しましょう。

相続した不動産売却の流れや税金を理解しよう

相続は、ある日突然起こるものです。贈与税には納期限がありますから、不動産を相続して相続税を支払う必要がある場合、早急に現金化しなければいけません。

とはいえ、焦りは禁物です。利用できる制度や注意点などを理解した上で、着実に手続きを進めてください。まずは、法定相続人同士が十分話し合い、ひとりひとりが納得できる相続の形を検討するところから始めましょう。そのためにも、正しい知識を身に着けることが大切です。