建築・間取り

家事も育児もスムーズに!子育て世代のための家事動線

執筆者
出口 恵

家事の負担を減らし、スムーズに行うためには「家事動線」が大切!なんとなくは分かっていても、実際に家づくりに活かすとなると難しいですね。今回は、子育て世代ならではのお悩みに注目しながら、最優先したい動線から、意外と忘れがちなポイントまで、詳しく解説します。これを読めば、わが家が大事にすべき家事動線が見えてくる!

子育て世代の「これが大変!」に注目すれば、もっと快適な家事動線になる

これから家づくりをするみなさんは、毎日の家事をラクにする「家事動線」を意識した間取りにしたいという方が多いと思います。さて、このときに考えるべき「家事」とはなんでしょうか?

料理・洗濯・掃除。さらには“名もなき家事”と呼ばれる、一つ一つはささいだけれど、積もれば大きな負担となる家事の数々。そこに子育て家庭の場合は「育児」が加わります。育児と一口に言っても、食事やおむつ替え・着替え・歯磨きなどの身の回りのお世話にはじまり、一緒にあそぶことや読み聞かせ、けがや病気を防ぐための見守り・体調管理などなど、やらなければいけないことは多岐にわたります。

朝や夕方がとくに大変なのは、いくつもの家事や育児を「同時進行」で行わなければいけないから。例えば、

…朝ごはんを作りながら、子どもが危ないことをしていないか見守り、合間に天気予報をチェックしてその日に着させる服を考え、園にもっていくコップやスプーン・フォークを準備。煮込み時間や焼き時間のすきに洗濯機をまわし、冷蔵庫の食材を確認して帰りのスーパーで買うものをリスト化…(まだまだ続く)

そんなことを、毎日あたりまえのように行っているママやパパはすごい!

料理・洗濯・掃除といった分かりやすい家事だけでなく、同時に進めなければいけない細かいけれど大変な家事・育児に注目することで、子育て世代にとって本当の意味で快適な「家事動線」が見えてきます。

今回は、とくにキッチン周りの家事について、どんなことが負担になりやすいのか?それを解決するためにはどんな動線をつくればいいのか?一緒に考えていきましょう。

まず考えるべきはキッチン〜洗面所

 [タマホーム富士支店 大安心の家 三島展示場]

家事の中心となる「キッチン」と「洗面所」。この間をできるだけスムーズに行き来できるようにすることで、家事の効率はグンとアップします。〈ごはん作りの合間に洗濯機をまわす〉という流れが代表的ですが、それ以外にも、

●園から帰ってきたら、コップやスプーン・フォークはキッチンに、汚れたタオルや着替えは洗面所にもっていく
●食事中、子どもが食べこぼして汚れた服を洗面所で洗う
●夕飯の片付けをしながら、子どもがお風呂から上がったら着替えや髪を乾かすのを手伝いにいく

などなど、キッチンと洗面所をスムーズに移動できれば、効率的に行えることがたくさんあります。

[住友林業 The Forest BF 三島展示場]

さらには、キッチン〜洗面所〜廊下(トイレ)〜リビング〜ダイニングをぐるりと一回りできるような「回遊動線」を確保できればより理想的です。

家事や育児を同時進行していると、家中のあちこちを何度も往復してヘトヘトになることがあります。回遊できる動線なら、どこで家事をしていても、子どもに呼ばれたらすぐに様子を見に行けますし、すきま時間にさっと移動して他の家事をこなすことができますね。

理想は3歩以内!キッチン内の家事動線

[一条工務店 i-smart 静岡東展示場]

続いては、家事の中でもとくに負担の大きい「料理」について考えてみましょう。料理には、献立決めや食材の買い物からはじまって、調理、配膳、食器洗いまで、さまざまな過程があります。キッチンでの“動き”だけに注目してみても、

●食材・調理器具を冷蔵庫や収納庫から取り出す
●調理の最中に出たゴミを分別してゴミ箱に捨てる
●食器棚から食器を出す/しまう
●ダイニングテーブルをふく
●配膳/下膳
●残り物を冷蔵庫にしまう

などなど、キッチン内をあちこち動き回っていることに気がつきます。料理というと、シンク・調理台・コンロでの作業を想像しがちですが、じつは冷蔵庫・収納庫・ゴミ箱・食器棚・ダイニングテーブルと、意外と移動が多いもの。夏場に料理をすると汗だくになるのは、コンロの火の熱さだけのせいではなさそうですね。

[クレバリーホーム榛南店 CXシリーズ 榛南展示場]

広々としたキッチンには憧れますが、一般的には「3歩以内」で移動できる範囲にすべてがまとまっているキッチンが理想的だと考えられています。調理台を中心に冷蔵庫や食器棚、ゴミ箱ができるだけコンパクトにまとまり、手をのばす、振り返るなどの最小限の動きで作業ができるのが、動線的には使い勝手のいいキッチンだと言えそうです。

キッチンとダイニングテーブルの配置のポイント

配膳/下膳をはじめ、子どもが小さいうちは、食べこぼしを拭くためにフキンを取りに行ったり、落としたスプーンやフォークを取り替えに行ったりと、キッチンとダイニングテーブルを行き来する頻度はかなり高めです。

キッチン〜ダイニングの移動をスムーズにする間取りとして、2つの例をご紹介します。

1)アイランドキッチンを採用する

[日本ハウスホールディングス 浜松営業所 3LCC HOUSE 浜松展示場]

[セキスイハイム東海 パルフェGX 藤枝展示場]

アイランドキッチンとは、アイランド=「島」という言葉が示す通り、壁面からはなれた独立した位置に設置するキッチンです。左右どちらからでも出入りできるため、ダイニングとキッチンを回遊することができ、行き来がスムーズになります。

また、できあがった料理や食器の受け渡しがしやすかったり、複数人でキッチンに立つときにも広々と使えたりというメリットもあります。一方で、キッチンの散らかりが目立ちやすいのがデメリットです。

2)キッチンとダイニングテーブルを横並びに配置する

[へーベルハウス そらのま+ 浜松展示場]

[アイ工務店 長期優良住宅 Ees(イエス) 静岡展示場]

キッチンの真横にダイニングテーブルを配置すれば、配膳などを横移動だけですませることができます。さらに、子どもが小学生になりダイニングテーブルで宿題をするようになったときに、調理中でもすぐそばで様子を見てあげることができます。せっかくのリビング学習でも、キッチンと机に距離があると、調理中に手を止めて、ノートやプリントが見える位置まで行ってあげるのは案外面倒なもの。子どもの「ここ見て!」に、横移動だけでサッと応えてあげられるのはうれしいポイントです。

一方デメリットとしては、キッチンとダイニングテーブルを横並びで配置するためには、横長なスペースが必要になること。場合によっては、間取りの自由度が下がってしまうこともあります。

意外と忘れがちなキッチン〜玄関の動線

[福工房 福工房 袋井モデル 袋井展示場]

意外と忘れがちで、そして負担に思う人が多いのがキッチン〜玄関の移動。まとめ買いをした大量の食材を、キッチンまで運ぶのは一仕事。お米や飲料といった重い荷物があるときにはなおさらです。さらに、子どもが小さいうちには片手に子どもを抱っこして、片手で荷物を運ばなければいけないことも。そんなときに、玄関からキッチンまでに距離があると、大きな負担になります。

[住友不動産 J・レジデンス 富士展示場]

また、ゴミ出しも暮らしには欠かせない家事。生ゴミやおむつゴミを抱えてリビングを横切るのには抵抗があるという方は、ゴミ出しの動線も考えておきたいですね。キッチンに「勝手口」を設ける人は減少傾向にありますが、キッチン〜外の動線を快適にするためには有効なものです。費用や防犯面などの課題もありますが、選択肢の一つとして検討してみてもよいでしょう。

まとめ:誰にとっても使いやすい家事動線を

家事や育児をスムーズにする、子育て世代のための家事動線。上でご紹介したすべてを間取りにとり入れるのは難しいかもしれません。そんなときは、ご家族の毎日のルーティンや、「ここが一番の困りどころ!」という家事・育児を具体的にイメージしてみることをおすすめします。そうすることで、優先すべき家事動線が見えてくるはずです。

そしてもう一つ。家事動線は、ママだけのためのものではありません。

●パパとママが家事・育児を分担したときに、お互いをサポートしやすい
●子どもが成長したときに、自分のことを自分でしやすい
●家事代行などのサービスを利用した時に、作業をお願いしやすい

家事や育児をみんなでシェアしたりサポートしたりができる「誰にとっても使いやすく、快適な動線」がこれからは必要だと思います。

[一条工務店 i-smart 袋井展示場]

SBSマイホームセンターには、ここでご紹介した以外にもさまざまな間取りを提案したモデルハウスがあります。サイト内の「モデルハウス検索(https://www.sbs-mhc.co.jp/search.php)」では、「家事スペース・家事動線」などのキーワードで絞り込み検索が可能です。

ぜひ、たくさんの実例を比較して、理想の家事動線を考えてみてくださいね。毎日の家事・育児の負担を減らし、ご家族との時間や、自分の時間をゆったりと過ごす!そんな家づくりのヒントになればうれしいです。