マネープラン

不動産取得税の軽減措置とは?控除額から申請手続きまで解説!

執筆者
棚田 将史 (ファイナンシャルプランナー2級)

不動産取得税とは、土地や建物を購入したときに一度だけ課せられる税金です。税額は、「取得した不動産の価格×税率」で計算されます。税率は土地・住宅が3%、住宅以外の家屋は4%です。

不動産取得税には、2022年現在、税制上の軽減措置が設けられています。条件を満たせば税負担が軽減されるという措置です。当記事では軽減措置の概要と控除額、申請手続きを解説します。

関連記事:住宅に関わる税金の種類とは?節税のポイントも解説!

 

不動産取得税の軽減税率は新築と中古で異なる

家屋における不動産取得税の軽減措置は、対象の家屋が新築か中古かで控除額が変わってきます。新築・中古双方のケースをそれぞれ見ていきましょう。

 

 

新築住宅の場合

軽減措置により、新築住宅の不動産取得税を計算するにあたって、「建物部分の固定資産税評価額から1,200万円(評価額が1,200万円未満の場合は、その金額が限度)が控除」されます。

※認定長期優良住宅の場合は1,300万円が控除されます

なお固定資産税評価額とは、固定資産評価基準に基づいて市区町村が決定する、固定資産の価値です。家屋の取得金額とは別なので注意しましょう。

一般住宅で軽減措置を適用した際、不動産取得税の計算を式で表すと以下の通りになります。

(家屋の固定資産税評価額-1,200万円)×3%

実際に支払う税額に換算すると、36万円(1,200万円×3%)の軽減になります。

例えば評価額が3,000万円の場合、軽減措置なしの不動産取得税は90万円です。適用できたときは評価額が1,800万円となり、税額も54万円となるため、軽減措置がなしの場合と比べて36万円安くなります。

新築住宅でこの軽減措置を適用する延べ床面積の条件は次のとおりです。延べ床面積には、マンションの共用部分や物置、車庫なども含まれます。

中古住宅の場合

中古住宅(中古マンションなど)を取得した場合の不動産取得税軽減措置は、取得した家屋の築年次(何年に建てられた住宅であるか)によって控除額が変わります。

中古住宅の不動産取得税の計算式は以下の通りです。

(建物の固定資産税評価額−築年次ごとに定められた控除額)×3%

東京都の場合の、築年次ごとの控除額は次の表の通りとなります。

中古住宅取得時に不動産取得税の軽減措置を受けるためには条件があります。
下記のすべてを満たさなくてはなりません。

・個人が自己の居住用に取得した住宅であること(住宅でない家屋を住宅用にリフォームする場合は取得前にリフォームが完了していること)
・延べ床面積は50㎡以上~240㎡以下であること(新築住宅と同じく、共有部分や車庫などは床面積に含めます)
・耐震基準要件のうち「1982年1月1日以降に新築されたもの」または「1981年12月31日以前に新築された住宅のうち新耐震基準に適合していることが認められたもの(取得前2年以内に調査・証明が終了しているものに限る)」のいずれかに当てはまること

 

土地の不動産取得税は少し複雑なので注意

土地の不動産取得税の計算方法は、家屋より少し複雑になっています。なお軽減措置を受けた場合の不動産取得税は以下の通りです。

(土地の固定資産税評価額×1/2× 3%)ー軽減額

家屋との違いは、税率を乗じてから軽減額を差し引くという点です。
また軽減額は、以下に示したうち高い方が適用されます。

・(土地1㎡あたりの固定資産額×1/2)×(住宅の課税床面積※×2)×3%
・45,000円
※上限200㎡

土地1㎡あたりの金額とは、固定資産評価額を地積(土地の面積)で除した額です。軽減措置により、固定資産評価額を1/2にします。なお、本措置は「2024年(令和6年)3月31日までに取得した建物」という時期制限があります。

 

新築住宅の不動産取得税軽減措置の適用要件

住宅を新築した際、土地の不動産取得税に軽減措置が適用されるのは、「新築住宅の不動産取得税要件」を満たし、なおかつ以下3つのいずれかに該当する場合です。

・「土地取得後3年以内にその土地の上に住宅を新築すること」かつ「住宅が新築されるまで、その土地を継続して所有していること」
・新築前に先行して取得した土地を譲渡した場合は、土地取得から3年以内に譲渡相手がその土地の上に住宅を新築していること
・住宅を新築後から1年以内に、その住宅を新築した人がその住宅の敷地(土地)を取得していること

中古住宅の不動産取得税軽減措置の適用要件

中古住宅を購入した場合は、次の条件を満たしていると土地の不動産取得税が軽減措置を受けます。

・土地と住宅の取得者が同じであること
・取得した住宅が中古住宅の軽減要件を満たしていて、なおかつ土地の取得が住宅取得前後の1年以内であること

新築・中古の建物のいずれも、土地の所有者と建物の所有者が同じでなければならないという点では同じです。

 

不動産取得税の軽減措置申請の流れ

ここからは実際に軽減措置を申請する際の流れを解説します。不動産取得税の基本的な申請方法と納税方法、軽減措置を受ける場合に必要な書類の3点を見ていきましょう。

都道府県税事務所に申請

不動産取得税は国税ではなく、都道府県に納める地方税です。そのため不動産取得税の申請は税務署ではなく、取得した不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所にて行います。

届け出を行う場所は、不動産取得税担当課です。申請書の提出期限は都道府県によって異なりますが、不動産を取得(不動産の登記が完了)してからおおよそ20〜60日以内となります。詳細な提出期限は、不動産の担当者や都道府県税事務所にお問い合わせください。

申請書は都道府県税事務所の窓口や、公式ホームページにて入手が可能です。不動産の所在、不動産取得者、地積、取得年月日、不動産の種類、取得した要因などを記載しましょう。

また、申請書に加えて後述する必要書類を揃える必要があります。

不動産取得税を納税

申請を終えた後は、都道府県税事務所から不動産取得税の納税通知書が送られてきます。ただし、納税額が0円の場合は送られてきません。

送付時期の目安は、おおよそ不動産を取得した日の半年〜1年後です。詳細は都道府県税事務所にて確認できます。

不動産取得から不動産取得税納付まで期間が空いてしまうので、納付する際にキャッシュが足りないという事態にならないよう、事前に準備をしておきましょう。

納税通知書が送られてきたら、納税通知書に記載されている日時までに不動産取得税を納付します。納付方法は自治体によって対応できるものとできないものがありますが、以下の方法が可能です。

・都道府県税事務所の窓口
・郵便局の窓口
・金融機関の窓口
・コンビニ
・クレジットカード決済
・キャッシュレス決済

期日までに納付しないと、延滞金が発生します。納付せずに放置していると督促状が届き、放置すると財産差し押さえに発展するケースもあります。万が一、期限までに納付できない場合は、事前に都道府県税事務所に相談しましょう。

軽減措置も書類申請が必要

不動産取得税の軽減措置を適用する場合は、申請書以外にもさまざまな書類が必要になります。主な必要書類とその他必要なものは次のとおりです。

・不動産取得税課税基準の特例適用申告書(家屋・土地それぞれ1部ずつ)
・売買契約書(住宅引渡証書)・最終代金領収書や建築工事請負書など、申請する不動産の種類に応じた所定の書類
・不動産取得税の納税通知書
・印鑑
・住宅の登記事項証明書(あるいは登記謄本)

取得した不動産が新築であるか、建売住宅や新築マンションであるか、中古住宅であるかなど、ケースによって必要書類に違いがあります。事前に確認しておきましょう。

申請書の提出期限は、不動産を取得してから原則として60日以内です。不動産取得税の申請手続きと同時に申請できます。

納付後に軽減措置を適用する場合は、一旦納付書どおりの税額を納めてから、後日「不動産取得税額申請書」と必要書類を提出して、還付請求ができます。ただし、請求できるのは不動産取得後5年間が限度です。

 

不動産取得税の軽減措置を活用して夢のマイホームを手に入れよう!

不動産取得税の軽減措置を活用することで、非常に高い節税効果を得られます。用意する書類は多いものの、申請するだけで適用される可能性があるので、使えそうなときは積極的に活用しましょう。

数十万円単位の節税ができれば、新しい家具の購入や増改築に回すことができます。夢のマイホームを手に入れるためにも、ぜひ不動産取得税の軽減措置を利用してください。

関連記事:住宅に関わる税金の種類とは?節税のポイントも解説!
     固定資産税や都市計画税が下がる?計算方法や軽減措置について解説!