マネープラン

消費増税と景気対策

執筆者
鈴木 元一朗(グランドコンパス)

 消費税が10%になろうとしています。「今回は絶対にやれる」と刺々しい表現の記者会見を行った財務大臣はこう続けました、「前回のように消費増税後に景気が落ち込むようだったら、失敗である。だからこそ補正のタイミングでなく景気対策を打つ」と。それが住宅ローン減税の3年間延長や住まいの給金の拡大である2019年税制改正大綱です。景気対策というよりも駆け込み需要の抑制のように見えるは私だけでしょうか。

 そもそも消費税増税の目的は、一つは福祉の拡充で、教育の無償化であり、もう一つは借金返済とされていました。今回の住宅や車の景気対策や、軽減税率の導入などで増税分を使い切ってしまわないだろうか?それは恒久的なものではないので、その後の税収が安定してくればいいのか、それとも今後の消費増税でも景気は後退しないことの布石でしょうか。

 高額な買い物である住宅ですから消費税も大きいです。 3,000 万円の住宅購入ですと、現在の8%で240万円ですが、10%となると300 万円と60万円もの増税になります。

 では、住宅ローン減税 3 年間延⾧を利用した方が良いのか、試算してみましょう。 11 年目以降の 3 年間で建設費の2%相当額か、住宅ローン3年延⾧分の金額か、どちらか低い方の金額になります。
11 年目以降のローン残高が毎年 20 万円以下なので 20 万円×3 年=60 万円の還元 ではなく、約 14 万円×3 年=42 万円となります。つまり消費増税前の方が 18 万円お得で あることがわかります。

 また、住宅ローンを借り入れしない方は60万円全額還元されないですよね。 つまり、借り入れの多い方は 全額還元される可能性が大きいのです。
しかし、増税分も借り入れをしていませんか?その10年間の返済利息がかかりますよね。 得をする方は、いないということです。

 次に、景気対策の住まい給付金の拡大についてみてみましょう。
国交省の簡便表を使いましょう。 (年間収入から社会保険料控除や扶養控除、給与所得控除などを引いた後の課税所得に税 率4%をかけて算出します。) 消費税8%の時の金額と10%の時の住まい給付金額を比べてみましょう。 (夫婦で共有名義なら持ち分割合の掛け算が必要になります。) これは受け取る金額が増える方が多くなるのではないでしょうか。

 消費増税前か、増税後が得かの1つの目安にはなりますが、果たしてそうでしょうか?
 そもそも消費増税に踏み切る背景としては物価上昇など景気回復時に行うとされています。だからこそなりふり構わず景気対策をしたのが今回の税制大綱です。また日銀の⾧期金利上昇の容認がされました。