注文住宅と建売住宅では平均購入価格に違いが見られます。注文住宅と建売住宅の購入価格の違いや地域別の平均価格、違いが出る理由、かける費用による注文住宅の違いなどを解説します。
一戸建てを購入する方法は、設計事務所やハウスメーカーに設計・工事を依頼して建ててもらう「注文住宅」と、不動産会社などから土地付きの建物を購入する「建売住宅」の2つに分けられます。注文住宅と建売住宅の平均購入価格に違いはあるのでしょうか?
当記事では注文住宅・建売住宅の平均購入価格の違いや違いが出る理由、注文住宅の費用ごとの違いなどを解説します。
注文住宅と建売住宅の平均購入価格の違い
引用: 2020年度フラット35利用者調査 P9 | 住宅金融支援機構
独立行政法人 住宅金融支援機構が実施した「フラット35利用者調査」によると、土地付き注文住宅・注文住宅・建売住宅の平均所要資金(購入価格)はいずれも、データを見るに、建物のみの注文住宅と建売住宅ではほとんど購入価格が変わりません。
一方で土地付きの注文住宅だと、建売住宅より約900万円高くなっていました。建売住宅が土地を含んでいると考えると、注文住宅のほうが購入金額は高額になりやすいといえるでしょう。
地域別住宅の購入価格
住宅の購入価格は、地域ごとに違いが出るのでしょうか。注文住宅・土地付き注文住宅・建売の地域別の購入価格を、「フラット35利用者調査」のデータからみていきましょう。
注文住宅の購入価格
引用: 2020年度フラット35利用者調査 P10 | 住宅金融支援機構
「所要資金(注文住宅・土地付き注文住宅)」
いずれの地域においても、注文住宅の購入価格の平均は、2014年度以降上昇傾向がみられます。 注文住宅の平均購入価格は、全国だと3,534万円です。
一方で首都圏の平均は3,808万円と、全国平均より約270万円高額です。その他地域(近畿圏・東海圏を除く)の平均3,358万円と比べると、450万円ほどの差が見られます。
また、近畿圏は3,748万円・東海圏は3,606万円と、いずれも全国平均より高いという結果が出ています。首都圏・近畿圏・東海圏など、比較的栄えている地域では購入価格が高めの傾向があるようです。
土地付き注文住宅の購入価格
引用: 2020年度フラット35利用者調査 P10 | 住宅金融支援機構
土地付き注文住宅の購入価格は、2013年度以降より上昇傾向がみられます。
土地付きの注文住宅の購入価格においても、全国平均より首都圏・近畿圏・東海圏のほうが高く、その他の地域は低いという結果でした。
とくに首都圏の購入価格5,162万円は、次点の近畿圏4,520万円より約600万円、その他地域より約1,200万円高くなっています。
国土交通省の「令和2年都道府県地価調査」などの結果を見ても、東京都の土地の価格はダントツで高額です。この土地の価格の違いが、調査結果にも影響していると考えられます。
建売住宅の購入価格
引用: 2020年度フラット35利用者調査 P11 | 住宅金融支援機構
建売住宅の平均購入価格の推移は、他の住宅と比べると上昇傾向は緩やかです。2017年度からは多くの地域において、やや上昇および維持の傾向となっています。より長期スパンで見ると、2010年度から一旦下降後、2012~2014年度を境に価格がもとに戻り、そこからさらに上昇するV字線を描いています。
東海圏においては、2020年度の時点でまだ2010年度の平均購入価格に届いておらず、やや安価での取引となっているようです。逆に首都圏は他の地域と比べると、とくに2017年度より大きな価格上昇が見て取れます。
購入価格の平均は首都圏の3,922万円がトップ。次いで全国平均が3,495万円です。近畿圏・東海圏・その他地域はいずれも全国平均を下回っています。
以上を考えると、全国平均の数値を押し上げているのは首都圏の建売住宅だと推測されます。土地付き注文住宅と同じく、東京都の土地の高さが結果に反映されているのではないでしょうか。
注文住宅と建売住宅購入者の年収による違い
引用: 2020年度フラット35利用者調査 P8 | 住宅金融支援機構
注文住宅や建売住宅購入者の年収別での違いを見ると、注文住宅を購入する層の平均年収は、建売住宅を購入する層の平均年収よりやや高めとの結果が出ています。
この結果を見るに年収が高い方は、一から建築士に依頼して希望を反映できる注文住宅を選ぶのではないかと推測されます。とはいえ、そこまで大きく年収額が変わっているわけではありません。
なお、もっとも購入層の平均年収が高いのはマンションの789万円です。土地付き注文住宅635万円と比べても、約150万円もの差が出ています 。
注文住宅と建売住宅の平均購入価格に違いがある理由
注文住宅と建売住宅の平均購入価格に差がある理由として、「注文住宅は一軒ごとに価格差がある」「注文住宅は資金の項目が詳細」「注文住宅は完成まで時間をかけられる」 の3点が挙げられます。
注文住宅は一軒ごとに価格差がある
設備や素材などを自由に決めやすい注文住宅は、購入者によって費用の差が生まれやすく価格も大きく異なります。そのため一軒ごとに価格差があり、全体の相場が掴みにくい傾向が見られます。
「注文住宅って建売住宅より高いのでは?」と疑問に思われるかもしれませんが、すべての注文住宅が高いわけではありません。
建売住宅は販売の仕組みによるコスト削減によって、価格が安い傾向があるのも事実です。しかし、プランによっては注文住宅のほうが安くなるケースもあります。
実際にローコスト住宅と呼ばれる、部材・設備の一括購入やプラン・デザインの限定などによって、価格を抑えている注文住宅も存在します。
注文住宅は資金の項目が詳細
注文住宅は建売住宅と比べると、資金の項目がより詳細になっています。例えば、土地購入費、土地購入に必要な諸経費、建物の建築費、その他の諸経費(登録免許税など)などです。工法の統一や一括購入が難しい点はありますが、その分融通が利きやすく自分の希望も叶えやすいでしょう。
一方で建売住宅は、注文住宅ほどの自由さはありませんが、土地のまとめ買いや規格化した工法・建材での建築などを販売者側で行うことで、コスト削減がなされています。このように価格差の主な要因はこうした販売方法の違いとなります。
注文住宅は完成まで時間をかけられる
土地・材料の準備経路や建築方法がある程度確立されている建売住宅は、注文住宅と比べて完成までの期間が短い傾向が見られます。また、一軒ごとに大きなグレード差が生まれにくくなっています。
一方で注文住宅は、購入者のこだわり次第で完成までの期間を調整することができ、また時間をかければ、その分グレードの高い住宅を建てることも可能です。場合によっては建売住宅よりも完成までの時間がかかってしまいますが、その分自分の家に向き合う時間もかけられるでしょう。
注文住宅の費用ごとの違い
ここからは注文住宅を新築することを想定し、1,000万から4,000万円までの範囲で、費用ごとの注文住宅の特徴を簡単に解説。
1000万円台の注文住宅の特徴
1,000万円台の注文住宅は、一般的な相場よりも価格が非常に抑えられた物件です。「住宅以外のことにお金を使いたい」という方向けのプランがメインですが、限られた予算の中で「自分が住みたい家に仕上げる」ことも可能です。
建物は極力無駄を省いたシンプルな構造になるため、その分費用を抑えることができます。また凹凸のない正方形・長方形、1階と2階が同じ総面積、外壁やレンガなどの仕上げ材を使用しないことで、別の部分に費用をかけることも可能になってきます。
なお屋根の種類は、切妻屋根のほかにも傾斜が1面のみの片流れ屋根などを選ぶこともできるでしょう。
2000万円台の注文住宅の特徴
1,000万円台と比べると2,000万円台の注文住宅は、こちらの希望をある程度反映した住宅に仕上げられます。とはいえ、平均購入価格よりは低めの金額であるため、こだわりを実現する代わりに他部分のコストを下げるといった工夫が必要になるでしょう。
たとえば「最新のキッチン・バスルームを入れる代わりに家具は今までのものを使う」「内装はこだわらず、ドアや窓の増加・グレードアップを目指す」などが例として挙げられます。
このように希望の優先順位をつけることで、2000万円台でも自分のこだわりを実現しやすくなります。
3000万円台の注文住宅の特徴
全国平均の購入価格に近い3,000万円台の注文住宅であれば、こちらの希望をおおよそ叶えられる住宅を建てられるでしょう。
設備・建築資材のグレードアップや家面積の拡張、凹凸を取り入れたデザインチックな形状、希望を反映した間取りなどが取り入れられます。余裕がある場合は、建物外の塀・柵や庭にもこだわれるかもしれません。
3000万円台は全体からみると平均的な価格帯ではあるため、すべての希望を反映できるかといえば、少し難しい可能性があるかもしれません。しかし、2,000万円台と同じく希望の優先順位をつけることで、価格と希望のバランスとれるでしょう。
4000万円台の注文住宅の特徴
4,000万円台の注文住宅であれば、よほどの豪華仕様にしない限りはほとんどのこだわりを実現できる可能性が高いです。
吹抜け施工やコ型・L型など外壁面積が大きいおしゃれな形状、良素材のフローリング、自然素材を使用した内装なども検討できるでしょう。
まとめ
注文住宅と建売住宅の購入価格には、ある程度違いが存在します。注文住宅は建売住宅より購入価格がやや高くなるのが一般的です。とはいえ、工夫次第では注文住宅であっても、建売住宅より安く建てられます。あなたのこだわりと妥協点を明確にしておくことが大切です。
注文住宅の新築を検討する際は、かける費用に対してどれくらいのグレードの建物を購入できるかを、事前に検討しておきましょう。