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蓄電池のメリットとデメリット!費用対効果は?補助金情報もあり!

執筆者
ライター:大岩保英 ファイナンシャルプランナー(2級ファイナンシャル・プランニング技能士 取得)

新築購入時に蓄電池の導入を考える方は多いのではないでしょうか。蓄電池は太陽光で発電した電気などを蓄えられる便利な設備ですが、費用面の負担や設置の必要性に不安を感じる方もいるでしょう。

そこで今回は蓄電池を導入するメリット・デメリットを解説します。記事を読めば、蓄電池の費用対効果がわかり導入するべきか判断しやすくなります。お得に設置できる補助金も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

自宅に蓄電池を導入するメリット

蓄電池を導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。蓄電池の設置により電気代の節約や災害対策などに活用できます。

以下に3つのメリットを解説しますので、蓄電池導入の参考にしてみてください。

電気代を節約できる

蓄電池を設置すると電気代の節約になります。電気料金は多くの電力会社で昼間は高く、夜間は安く設定されています。蓄電池がない場合、使用時間帯の電気料金を支払いますが、蓄電池があれば深夜帯に安く買った電気を充電し、昼間に使用できるのです。

ただし、時間帯による電気料金の違いは契約プランによって異なるため確認が必要です。

さらに太陽光発電とともに蓄電池を導入すれば電気料金の値上げにも対応できます。新型コロナウイルスによる経済低迷や、ウクライナ情勢による燃料費の高騰など電気料金の値上げは今後も続く可能性があります。

自宅で発電し蓄電池に充電して使用すれば、電力会社から電気を買う量が少なくなるため、賢く電気代を節約できるのです。

非常時に電気を使える

蓄電池は非常時の電源として利用できます。停電や災害は突然やってきます。蓄電池があれば停電前に充電しておいた電気で対応が可能です。さらに太陽光発電があれば電気を蓄電池にためられるため、電力会社から電気の供給が途絶えても電化製品が使えます。

特に乳幼児や高齢者がいる家庭では、数時間の停電でも大きな問題となりかねません。食べ物の保存や温めが困難になり、季節によっては気温差で体調を崩すこともあるでしょう。備えあれば憂いなしです。防災保険として利用できる点も蓄電池のメリットです。

太陽光発電を併用すると電気を蓄えられる

太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、自宅で発電した電気を無駄なく利用できます。太陽光発電は、太陽光が当たる時間しか発電できません。

日中に電力を消費した場合、発電した分を使うため売電に回す量は減ってしまいます。蓄電池を導入すれば夜間や発電量が少なくなる曇りや雨の日でも、蓄えておいた電気を利用できます。

また太陽光発電にはいわゆる卒FITがあります。FITとはFeed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)の略称で、経済産業省が2012年7月に開始した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」です。

電力会社が一定期間・一定金額で電気を買い取ることを国が保証したものです。一般家庭の太陽光発電の場合、10kwh以下であれば10年間は売電価格が据え置きになります。

FIT期間の10年を超えることを卒FITと言われており、売電価格が大幅に下がります。卒FIT後は売電による恩恵が少なくなるため、蓄電池を導入したほうが無駄なく電気を使用できます。

自宅に蓄電池を導入するデメリット

蓄電池を導入するか判断するためには、短所にも目を向けなければなりません。デメリットも理解した上で、導入を決めれば後悔せずに済むでしょう。以下に3つ紹介します。

導入費用がかかる

蓄電池のデメリットは導入費用がかかることです。導入費用は蓄電池の容量やメーカー・種類によって値段が異なります。蓄電池の種類は以下の5つです。

●リチウムイオン電池
●鉛蓄電池
●ニッケル水素電池
●NAS電池
●レドックスフロー電池

それぞれ特徴や耐用年数が異なるため、本体の価格にも違いが生じます。家庭用蓄電池はコンパクトで急速な充電・放電が可能なリチウムイオン電池が多く使われています。蓄電池本体と工事費用を合わせて100万〜200万円ほどが相場です。

蓄電池主要メーカーの本体価格は、家庭用蓄電池として設置されることの多い容量5.6〜6.3kWhのタイプで100〜150万円程度です。さらに蓄電池の設置工事と電気工事に費用がかかります。設置・電気にかかる工事費用は約20〜30万円ほどが相場となっています。

蓄電池の導入は設置にかかる費用の負担を考えておきましょう。

維持費がかかる

家庭用の蓄電池として用いられることの多いリチウムイオン電池は、充放電回数に寿命があります。寿命を迎えた蓄電池は充電効率が悪くなるため交換が必要です。

メーカーによって保証される期間や充放電サイクルの回数・電気を使える容量が異なります。寿命となった蓄電池や蓄電できる容量が少なくなるため、蓄電池にためた電気が短時間で消費されるようになります。

蓄電池を導入する際は、電池の寿命による交換費用やメンテナンスにかかる維持費も考慮しておきましょう。

設置スペースが必要

蓄電池を設置するにはスペースを確保しなければなりません。一般的な家庭用蓄電池の大きさは、幅80cm・高さ100cm・奥行き40cm程度です。エアコンの室外機をイメージするとわかりやすいでしょう。室内設置タイプはエアコン室外機1つ分、屋外設置タイプはエアコン室外機1〜2つ分が目安となります。

蓄電池の容量が大きくなるほどサイズもアップするため、確保できるスペースによっては設置できない商品もあります。

また、設置する場所は過度な高温・低温にならず、結露が発生しない場所が理想的です。設置するスペースや場所を考慮する必要があるのは、蓄電池導入のデメリットと言えます。

蓄電池を導入する際のコツ

蓄電池を導入する際に、十分な恩恵を受けるにはコツがあります。以下の2つを確認した上で蓄電池の設置を検討してみましょう。

太陽光発電を設置する

太陽光で発電できるのは太陽がでている日中のみです。日中、家で過ごす場合は太陽光で発電した電気を使いつつ、使わない電気を電力会社に売ること(売電)ができます。

太陽光発電があれば蓄電池なしでも売電はできますが、日中電気を使用すると売電に回す量が減ってしまいます。

蓄電池は設定した残量を下回らない限り、蓄えておいた電気を使用するため、太陽光発電で作った電気を無駄なく売電に回せるのです。

また、太陽光発電設置から10年が経過して卒FITを迎えると、売電価格が大幅に下がります(8〜11円/kWh)。売電するよりも太陽光で作った電気を蓄電池に蓄えて使えば、電気会社から電気を買う量が減り、電気代の節約になります。

費用対効果を考える

蓄電池を設置するときに重要となるのが費用対効果です。設備を導入しても元が取れなければ損になります。そもそも「元が取れる」とは、初期費用を経済効果が上回った時点を指します。計算式は以下の通りです。

初期費用÷年間の経済効果(売電収入・電気代削減)=元が取れるまでの年数

例えば、蓄電池導入に150万円かかり年間の経済効果が10万円の場合、150万円÷10万円=15年で元が取れます。

東京都を対象にしたエネルギー実態調査では、戸建て3人世帯における1か月の電気使用量は386kWhです。

386kWhを電気代に換算すると1か月の電気料金は約1万6,000円となります。これをすべて夜間電力でまかなう場合の電気料金は1万4,000円です。

中国電力「電気料金計算サービス」を利用したシミュレーション

そして売電収入は、太陽光発電で導入される住宅用として平均的な積載量である4.5kWで7万円が相場となるため、電気代削減と合わせると経済効果は以下の通りです。

●電気代削減:2,000円×12か月=24,000円
●売電収入:7万円
●経済効果:94,000円

蓄電池の初期費用が150万円の場合、150万円÷94,000円=約15年10か月で元が取れる計算です。

蓄電池の普及率

蓄電池の導入はどの程度まで進んでいるのでしょうか。蓄電池が一般家庭に普及しだした2011年以降から、2020年まで出荷台数が増加しています。

背景には国の方針と災害への懸念があります。2018年7月3日の閣議決定では太陽光発電を含む再生可能エネルギーを主力電力にする方針が示されました。豪雨災害や地震による停電への備えとして蓄電池の導入を考える方も増えています。

出典:https://www.jema-net.or.jp/jema/data/s7216(20190417).pdf

JEMA 蓄電システムビジョン|一般社団法人 日本電機工業会

今後も蓄電池の普及率は増加していくと見られています。日本電気工業会の調査によると、新築戸建件数に対する蓄電池設置の割合は2017年で5%でした。この先2030年には新築戸建件数のうち、おおよそ3件に1件にあたる34%で蓄電池が設置される予測となっています。

災害への備えのため蓄電池の需要が高まると、商品の供給が遅れたり工事までの待機期間が長くなったりする可能性があります。

蓄電池の導入を検討している方は、計画を立てておくとよいでしょう。

蓄電池をお得に設置できる補助金

蓄電池には設置費用がかかり、決して安い買い物ではありません。それを補填するためにいくつかの補助金があります。ここでは、国や自治体の補助金を紹介します。

国の補助金「DER補助金」

蓄電池には国から支給される「DER補助金」があります。蓄電池の容量1kWあたり3.7万円が支給されるもので、地方自治体の補助金と併用可能です。

ただし、補助金を使える人は限られます。予算に達すると締め切られるうえに、応募が殺到します。2022年のDER補助金は1回目・2回目ともに即予算満了となり、需要と供給のバランスがマッチしていません。

一方で、国は再生エネルギー拡大をすすめているため、今後もDER補助金が公募される可能性はあります。公募が再開されたときのために、DER補助金を利用できる条件を確認しておきましょう。

条件はDER(VPP)構築実証事業への参加です。DER(VPP)構築実証事業とは、工場や家庭に設置した太陽光発電や蓄電池の電力を「需給調整用」に活かす方策のことです。電力の大元を分散させる目的があります。

DER補助金を受ける場合は、蓄電池の運転モードに関わらず強制的に充放電が行われる、実証期間が終了するまで蓄電池の処分ができない、などの制約があります。

各自治体の補助金事例

国の補助金以外に地方自治体が独自に設けている補助金もあります。お住まいの地域によっては補助金でお得に蓄電池を設置できるかもしれません。以下に各自治体の補助金の事例を紹介します。

静岡県藤枝市

藤枝市には「家庭用蓄電池設置費補助金」と「家庭用ポータブル蓄電池等購入費補助金」があります。それぞれの利用条件と補助金額は以下の通りです。

<家庭用蓄電池設置費補助金>

・利用条件:

 1.再生可能エネルギー発電システムを設置した藤枝市内の住宅に家庭用蓄電池を設置する人もしくは、
   市内の住宅に再生可能エネルギー発電システムと同じく家庭用蓄電池を設置する人
 2.  家庭用蓄電池の工事前に藤枝市に交付申請をする人
 3.  市民税の滞納がない人
 4.「“もったいない”エコファミリー宣言」をした人
 ※以上すべてへの該当が条件

・補助金額:1kWhあたり2万円(10万円が上限)

<家庭用ポータブル蓄電池等購入費補助金>

・利用条件:

 1.  藤枝市に住みつつ、家庭用ポータブル蓄電池を購入する人
 2.  家庭用ポータブル蓄電池を購入する前に市に交付の届出をする人
 3.  市民税の滞納がない人
 4.「“もったいない”エコファミリー宣言」をした人
 ※以上すべてを満たす必要あり

・補助金額:購入費用(税別)の3分の1で、2万円が上限

静岡県牧之原市

静岡県牧之原市には、家庭用蓄電池システム補助金があります。
利用条件や補助金額は以下の通りです。

・補助内容:蓄電池システムの工事費用を一部補助(設置が太陽光発電システムのみの場合は対象外)

・利用条件:

 1. 市内在住または、市内に居住する予定のある人
 2. 長期優良住宅にお住まいの人
 3. 市税などの滞納がない人
 4. 建築・改修工事は補助金の申請年度内に始め、完了すること

・補助金額:

 1. 蓄電池システムを設置した場合、最大8万円(市内の業者なら最大10万円)
 2. 家庭用蓄電池を太陽光発電システムを同時に設置した場合、最大12万円(しない業者なら最大15万円)

静岡県浜松市

静岡県浜松市には「創エネ・省エネ・蓄エネ型住宅推進事業費補助金」があります。利用条件や助成内容は以下の通りです。

・補助対象になる設備

 1. 蓄電した電力を分電盤で住宅内部で用いるシステム
 2. 環境省「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素促進事業」の対象となるもの

・利用条件:

 1. 浜松市内に居住し、市内の戸建住宅に対象システムを設置した個人であること(新築時・建売住宅の購入時も可)
 2. 賃貸住宅ではない
 3. 工事完了日または工事代金の支払い完了日のうち遅い日が、令和4年4月1日〜令和5年3月31日
 4. 市税の滞納がない
 5. 市から同種の対象システムの補助金を受けたことがない
 6. 暴力団と無関係

・補助金額:最大10万円

まとめ

蓄電池を導入するメリット・デメリット、導入のコツやお得に利用できる補助金について解説しました。

蓄電池は太陽光発電システムと併用することにより、電気代の節約と売電による収入で15年ほどで元が取れる計算です。今後も続く可能性がある電気代の高騰を想定した際にも蓄電池は強い味方です。

太陽光や蓄電池を含めた家づくりにお悩みなら、展示場のモデルハウスへご相談ください。

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