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ウッドショックは今後も続く?今から住宅を購入しても大丈夫?

執筆者
大岩保英  資格情報:2級ファイナンシャル・プランニング技能士

2021年から木材価格が急激に高騰し、「ウッドショック」と呼ばれるようになりました。木材価格の値上がりは住宅価格の上昇を招くため、家を買いたい方にとって大きな不安要素となるでしょう。

そこで今回は、ウッドショックの今後の見通しや住宅購入のタイミングを解説します。記事を読めば、今すぐ家を買うべきなのか、しばらく待ったほうが良いのか判断しやすくなるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

 

ウッドショックとは?

ウッドショックは住宅や家具の価格に影響を与えますが、そもそもの言葉の意味や内容に詳しくない方も多いのではないでしょうか。

ウッドショックは、1970年代に起こったオイルショックになぞらえて作られた用語で、木材価格の上昇を意味します。2021年3月ごろから国際的に木材価格が高騰し始めました。きっかけは、新型コロナウイルスによる生産・物流の停滞とアメリカの新築需要の増加です。その後もロシアの木材の流通が不安視され、木材価格は上昇しました。

国内の住宅は多くが木材で建設されており、その約7割を輸入材に依存しています。今後の状況次第では、想定する価格帯で住宅建設ができなくなる可能性があるのです。そこで次項では、ウッドショックの今後の見通しについて解説します。

ウッドショックの今後の見通し

住宅の価格に影響を与えるウッドショックがいつまで続くのか、今後の動向が気になる方は多いでしょう。以下では、木材や製品の輸入物価指数から今後の見通しを解説します。

木材・木製品・林産物の輸入物価指数からの見通し

引用元:どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?|その他の研究・分析レポート|経済産業省

日本銀行の企業物価指数によると、「木材・木製品・林産物」は2021年1月から輸入価格が徐々に上昇の兆しを見せ、2021年12月には1年前と比較して73%の上昇となっています。

1年間で「丸太」は27%、「合板」は67%、輸入価格が上昇しました。上昇幅は「木材・木製品・林産物」と比べて小さいものの、2022年以降も上昇傾向は続いています。

一方で、「集成材」と「製材」は2021年12月まで大幅に価格の上昇を見せていましたが、2022年に入ってからは、若干下落傾向です。

集成材と製材、合板と丸太で輸入価格の波が二極化しています。

製材の輸入物価指数からの見通し

引用元:どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?|その他の研究・分析レポート|経済産業省

続いて、製材に着目して物価指数の推移を見てみましょう。2021年9月ごろにピークアウトしているものの依然として高値となっています。

これを米国製・欧州製・北洋製の地域別で見ると、2021年12月は前年同月と比較し、それぞれ134%・138%・106%と大幅な上昇であり、特に米国と欧州の上昇が際立っています。欧州・北洋は2022年以降下落傾向ですが、米国製材は高めに推移しており横ばいです。

ウッドショックはいつ終わる?住宅価格の状況は?

輸入木材の価格が高騰し続けると住宅の価格にも影響します。以下では新築戸建て住宅の取引状況や新築住宅の着工件数から今度の見通しを探っていきます。

新築戸建て住宅の取引状況

引用元:どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?|その他の研究・分析レポート|経済産業省

経済産業省「第3次産業活動指数」をもとに、新築戸建て住宅の取引の動向を見ていきましょう。

2020年4月新型コロナウイルスが急激な広がりを見せ、それに伴い土地や建物の売買を行う「建物売買業・土地売買業」の活動指数も急落しました。コロナ禍で収入の不安が出たころであり、マンションや土地を購入する人が減少したということです。

しかし、急落は一時的で、2020年8月には低下した数値を大きく上回りました。その後は緩やかに下降しながらも、おおむね横ばいとなっています。木材価格の上昇によって材料費などが高騰しているため、新築建設に踏み切れない人が多いのでしょう。

新設戸建住宅着工件数は下降傾向

引用元:木造住宅投資の動向をみる;新型コロナ感染症拡大以降は|その他の研究・分析レポート|経済産業省

新築戸建て住宅売買業(画像の青線グラフ)は2020年8月を頂点に徐々に低下しています。世界的な木材・木製品の価格高騰や建築資材の慢性的な不足が関係しているのでしょう。

木材・木製品の価格変動を、国内企業物価指数をもとに確認すると、2021年5月以降は前年の50%増となり、新築戸建て住宅のグラフとは逆方向に推移しています。

一方で、2022年以降の新築戸建て住宅売買は回復の兆しがあり、今後は持ち直す可能性もあります。

ウッドショックはしばらく続く

ウッドショックの影響がいつまで続くのか、先行きは不透明です。農林水産省「木材流通統計調査」によると国内の木材価格は徐々に下落傾向です。


引用元:「木材流通統計調査 木材価格(令和5年3月)」 | | 農林水産省

引用元:「木材輸入の状況について (2023年2月実績)」 | 林野庁

また、林野庁の「木材輸入の状況について (2023年2月実績)」においても、製材全体(グラフ青線)の輸入平均単価はピーク時より下落しています。しかし、2021年初頭の価格水準までは戻っておらず、この先も高値が続く可能性があるのです。

このように、木材価格は低下しているもののウッドショックの収束のめどはたっていないのです。

新築戸建て住宅価格は今後どうなる?

木材価格の高騰はピークに達し徐々に下落傾向ですが、その結果、新築住宅の価格がどうなるのかが最も気になることではないでしょうか。以下に、新築戸建て住宅の価格の今後を解説します。

木材市場は新たなステージへ

ウッドショックが起こった2021年3月当初は、木材価格の全体的な上昇でした。その後、集成材・製材の輸入価格が緩やかに低下する一方、合板や丸太は価格上昇が続いており、二極化しています。ウッドショックは木材全体の価格上昇を経て、種類ごとの需給バランスで価格が決まる新たな段階に入ったのでしょう。

なお、ウッドショックが起こった背景には、アメリカの金利政策による住宅需要の増加や、ウクライナ危機による木材供給の不安などが関連しています。今後も世界情勢によって輸入価格は大きく変化しうるため、木材価格の予測はしにくいのが現実ですが、国内価格はしばらく高値で推移していくと見込まれています。

住宅価格が下がるのはいつ?

新築住宅の価格は下がるときがやってくるのでしょうか。ウッドショックの原因の一つに中国やアメリカの新築需要の増加に伴う木材価格上昇があるので、両国の新築ブームが落ち着くことが前提になります。

中国・アメリカでの新築建設の増加により木材需要が増し、価格も上昇しました。そのため円安の傾向にある日本への輸出量は減りました。中国・アメリカでの新築需要が収まれば、木材価格も低下して日本の住宅価格も下がる可能性があります。

ただし、住宅価格を決めるのは木材価格だけではありません。木材以外の材料費・燃料費も高騰しているため、住宅価格は値下がりしない可能性もあります。今後の世界情勢や新型コロナウイルスが関連する影響にも注目しておきましょう。

ウッドショックが落ち着くまで住宅購入は待つべき?

ウッドショックが収束する見込みはたっておらず、木材価格の高値は続く可能性があります。それゆえ、木材価格が2021年以前の水準まで戻るまで住宅購入を待つのは得策ではありません。3つの観点から詳しく説明します。

今後も物価上昇が続く

物価高騰で家計を圧迫しており厳しい生活を強いられている方は多いのではないでしょうか。食料価格の高騰は連日のようにニュースで話題に上がります。例えば、長らく物価の優等生といわれてきた卵は、2022年2月1パック165円だったものが2023年2月に335円となりました。

物価高騰の流れは食料品だけでなく、建築資材も同様で、状況次第では住宅価格の高騰も考えられます。

さらに住宅ローンにも注目が必要です。これまで超低金利が続いていましたが、2022年12月に日銀が政策を修正したため、長期金利は上昇しています。そのことを受けて、住宅ローンの金利が上昇すれば、結果的に住宅購入にかかる費用が多くなる場合もあるでしょう。

住宅価格はさらに上昇する可能性も

住宅価格の高騰に関わるのは物価だけではありません。例えば、政府が進める働き方改革も住宅価格の高騰に影響します。

労働基準法が改正され、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から労働時間の上限規制が設けられています。建設業は特別に2024年まで猶予が与えられていますが、規制開始は間近です。

ワークライフバランスを整えるのは労働者にとっては有意義ですが、建設業全体の実質的な人件費上昇にもつながります。また、労働時間規制を遵守するために工期が延びれば、それだけ重機のレンタル料もかさむため、今後住宅価格は高騰する可能性があります。

高齢者の増加による売却や譲渡の影響

高齢者の増加も不動産価格に影響を与える要素です。団塊の世代が一斉に75歳以上となる2025年は所有者が介護施設に移ったり、子どもとの同居で自宅を手放したりするケースが増えるため、中古住宅の供給量が増えると予想されています。

しかし、それによって、住宅価格が下がるかどうかは疑問です。持ち家を探している人の一部は中古住宅に向かうでしょうが、新築需要を大きく変化させるほどのインパクトをもたらす状況にはないからです。

20代・30代の既婚者を対象としたアンケートでも、やはり新築を望む人が多く、はじめから中古住宅を考えている人は1割程度しかいないことがわかります。たとえ中古住宅が市場に多く出回っても、それによって新築需要が大きく減るような状況とはいえません。

新築住宅の建設を検討している方は、家を購入するタイミングの見極めが重要です。住宅購入のタイミングを決めるポイントは次項で紹介します。

住宅購入のベストタイミング

家は多くの方にとって人生最大の買い物です。購入に慎重になるのは当然でしょう。少しでも後悔のない選択ができるよう、以下に住宅購入のベストなタイミングを紹介します。

ライフスタイルでタイミングを決めると後悔しない

住宅の価格ではなく、自分のライフスタイルや家族構成の変化に合わせて住宅購入のタイミングを決めると後悔しにくくなります。

例えば「子どもが増えて今住んでいるアパートでは手狭になった」「昇格で給料が上がり、頭金にあてられるお金ができた」など、自分にとってベストなタイミングだと思えれば住宅購入を進めても良いでしょう。

若い時期なら住宅ローンの借入期間を長くできる

家を買うときは、住宅ローンを組む期間も考慮しておきましょう。若い時期に住宅ローンを組めば、ローンの借入期間を長くでき月々の返済額を抑えられます。

例えば、借入額3,000万円の返済期間20年と35年の比較は以下のとおりです。

返済期間20年 返済期間35年 両者の差
月々の返済額 137,968円 84,685円 53,283円
(借入額3000万円・頭金なし・金利1%・全期間固定金利でシミュレーション)

長期でローンを組むと、月の返済に5万円ほど差があります。

また、多くの方が定年退職までにローンを完済したいと考えるものです。65歳で定年退職するつもりで35年ローンを組む場合は、30歳で住宅を購入する必要があります。

住宅ローンを扱う金融機関の多くが、35年ローンが組める上限年齢を45歳までに設定しているため、住宅購入を遅らせすぎないよう注意しましょう。

ウッドショックの今後の見通しは不透明!自分のタイミングで住宅購入すると後悔しない

本記事では、ウッドショックの原因や今後の見通しを解説しました。木材価格の先行きは不透明であり、木材価格以外の要因でも住宅の価格が上昇する可能性があります。

住宅購入で何よりも大事なことは、自分が納得できるタイミングで購入できたかどうかです。家族構成やライフスタイルを考慮しつつ、できるだけ若いうちに住宅の購入を検討する意識が必要です。

住みたい家のイメージを固めたり、住宅価格を把握したりするために、展示場のモデルハウスに相談してみてはいかがでしょうか。