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静岡県東部・伊豆での家づくりの費用相場・特徴をご紹介

執筆者
木内菜穂子 (1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

静岡県東部は首都圏へ1時間程度でアクセスできるため通勤・通学にも便利です。静岡県東部・伊豆エリアでの家づくりを検討している方向けに、注文住宅の費用相場や、エリアごとの特徴を解説します。

静岡県東部は一年を通して温暖な気候に恵まれ、豊かな自然に囲まれて生活できるエリアです。首都圏へ1時間程度でアクセスできるため、通勤・通学圏内としての選択肢に入ります。子どもと楽しい時間を過ごせるスポットや公園も多数あり、子育て世代にもおすすめです。

 しかし、ひとことで静岡県東部といっても、エリアごとに特徴があり、住宅建設の費用の目安も異なります。

 この記事では、静岡県東部・伊豆エリアで注文住宅を建築する際の費用の相場や、エリアごとの特徴を解説していきます。

静岡県東部・伊豆エリアの特徴

静岡県東部地域は、熱海市、伊東市、御殿場市、伊豆の国市、伊豆市、富士宮市、富士市、沼津市、三島市、清水町、函南町、裾野市、小山町、長泉町の14の市町から成り立っているエリアです。

 年間を通して温暖な気候に恵まれ、みかんやいちご、わさび、海産物といった新鮮な食材が魅力です。

 このエリアには、「富士山」と「韮山反射炉」の2つの世界遺産が存在し、源頼朝をはじめとした鎌倉時代の歴史遺産も多数残されていることから、重みのある歴史の息遣いが感じられます。

 また、伊豆半島や箱根といった国内でも有数の温泉地も近隣にあり、リラクゼーションを求めて多くの観光客が訪れます。

 首都圏からのアクセスも良好で、東海道新幹線を利用して東京から熱海まで最短36分で到着可能です。自動車なら東名高速道路を利用し、東京ICから御殿場IC・沼津ICまで1時間程度です。首都圏へも問題なく通勤・通学できるでしょう。

 

静岡県東部・伊豆エリアの費用相場・特徴

東部エリアの主要な市について、住宅を建てる際の相場とエリアの特徴を紹介していきます。

なお、費用の相場は、40坪(約132㎡)の土地に30坪(約99㎡)の住宅を建てる場合を想定し、住宅建築費は3,000万円として試算します。

【相場の算出方法】
・40坪(約132㎡)の土地に30坪(約99㎡)の住宅を建てる場合とする
・計算式は「各市町の平均坪単価×40坪+住宅建築費3,000万円(※)」とする

住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」よると、2022年度の注文住宅の費用平均は3,717万円、平均住宅面積は122.8㎡である。これを99㎡に換算すると、「3,717万円÷122.8㎡×99㎡=29,966,042円」となるため、約3,000万円とする。

三島市:宿場町として古くから栄えた水の都

三島市は、源頼朝ゆかりの三嶋大社の門前町であり、東海道五十三次の宿場町としても栄えてきた歴史のある街です。

首都圏へのアクセスも良好で、品川・東京まで東海道新幹線で1時間足らずで到着でき、三島始発に乗車すれば座ったままラクに通勤できます。また、東名沼津ICや新東名長泉沼津ICなどを擁しており、静岡県東部の交通の要所にもなっています。

富士山からの伏流水や肥沃な土壌のおかげで、うなぎやさまざまな野菜が堪能できるのも魅力のひとつです。

三島市で住宅を建築する際の費用は、土地代込みで4,640万円が目安です。

三島市の今後の土地価格は、人口減少や空き家の増加などにより、下落する見込みとされています。三島駅付近や市街地は人気あるエリアですが、郊外にいくほど居住希望者は少なくなり、価格は下落傾向にあるようです。

沼津市:富士山の絶景と海の幸が豊富

沼津市は、東駿河湾地域や伊豆方面への交通の拠点として、また、この地域の商業・文化の拠点として、古くから中心的役割を果たしてきました。

市内のいたるところから雄大な富士山が眺められ、市の中心部には狩野川が流れ、渡し舟を楽しむこともできます。駿河湾からは豊富な海の幸が揚がり、肥沃な土壌ではお茶やみかんなどの名産物が栽培されています。

沼津市で住宅を建築する場合の費用は、土地代込みで4,330万円が目安です。沼津市の土地の価格は、農地の宅地化や人口減少などの影響により、沼津駅周辺の一部を除き下落傾向にあります。

東京駅から三島駅まで新幹線で45分、三島駅から沼津駅まで5分なので、1時間前後でアクセスできます。自動車の場合は、東京ICから御殿場ICを経由し沼津ICまで約1時間30分です。首都圏で働きながら、沼津でスローライフを送ることができるでしょう。

富士市:温暖な気候と暮らしのサポートが充実

富士市は北に富士山、南に駿河湾を擁している自然豊かなエリアです。江戸時代には東海道五十三次の吉原宿が置かれており、交通の要所として栄えてきました。

一年を通して温暖な気候に恵まれているため快適に過ごせるうえ、富士山からのおいしい水がいつでも飲めるのも魅力です。

首都圏からのアクセスは、新幹線で東京駅から新富士駅までは約70分、品川駅からは最短54分と良好で、新幹線で通勤している方が多くいます。

富士市で住宅を建築する費用は、土地代込みで約3,840万円が目安です。富士市では人口が減少傾向にあり、土地の価格も下落傾向にあります。富士駅周辺は人気があり地価が高めですが、郊外に行くほど安くなっているのが現状です。

富士市では、子育て支援や移住支援、介護支援、教育支援といった暮らしに関するさまざまなサポートを行っており、住みやすいエリアといえるでしょう。

御殿場市:四季折々の美しい景観が魅力の高原都市

御殿場市は、富士山の東側に位置する高原都市で、県内では中規模都市のひとつとして発展しているほか、富士山周辺や箱根方面への交通拠点としての役割も担っているエリアです。

高原状のエリアにあるため気候は冷涼多雨で、稲作が行われているほか、富士山からの美味しい水を利用して、「水かけ菜」やわさびなどが栽培されています。

本州で最大の「東富士演習場」や3つの陸上自衛隊駐屯地などがあり、自衛隊関連施設が多いエリアでもあります。

御殿場市で住宅を建てる場合の費用は、土地代を含めて約4,020万円が目安です。御殿場市でも、農地の宅地化などが原因で、郊外エリアを中心に買い手が減少し、土地価格も下落傾向にあります。

東京から御殿場までは約100キロあり、電車では2時間程度、自動車では東名高速道を利用すると1時間程度でアクセス可能です。東京や横浜などへの通勤も十分に可能でしょう。

裾野市:豊かな自然に囲まれた「健康文化宣言」都市

裾野市は富士山のふもとに位置し、東の箱根外輪山、西の愛鷹連山に囲まれた自然豊かな工業・産業のまちです。温暖な気候に恵まれ、四季折々の美しい富士山の姿を見られます。

裾野市は「健康文化都市宣言」をしており、市民一人ひとりが健康的な生活習慣を身につけ、「すがすがしく、すこやかに、たすけあいに生きるまちづくり」をめざしています。

電車で裾野駅から首都圏に向かう場合は、所要時間は最短で1時間30分ほどです。また、自動車の場合は、裾野ICから東京ICまで約1時間でアクセスできます。

裾野市で住宅を建築する際の費用は、土地代込みで約3,920万円が目安です。裾野市で最も土地の価格が高いのは「伊豆島田」で、最も低いのは「須山」となっています。価格上昇率が顕著なのは「千福」「金沢」「須山」「公文名」といったエリアで、近年特に注目されています。

伊東市:首都圏までのアクセスも良好な温泉地

伊東市は、静岡県の最東端に位置しており、エリアの約45%が「富士箱根伊豆国立公園区域」に指定されている美しい自然が魅力のまちです。海洋性の温暖な気候に恵まれ、四季を通して過ごしやすく冬場も温暖です。

伊東温泉は平安時代に発見されたといわれており、江戸時代には3代将軍徳川家光に湯治湯として献上されていました。また、伊東市は海と山に囲まれたエリアなので、新鮮な海産物や採れたての農作物を堪能できます。

2018年に伊豆半島がユネスコ世界ジオパークに認定されましたが、伊東市内にも城ヶ崎海岸や大室山などのジオサイトが多数あります。

伊東駅から東京駅までは新幹線を利用して約1時間30分ほどで、踊り子号を利用すれば乗り換えがありません。首都圏への電車通勤も可能です。

伊東市で住宅を建築する際の費用は、土地代を含めて約3,820万円が目安です。土地の価格は、人口減少などの影響により全体的に減少傾向にあります。

下田市:白く美しい砂浜を多く有する観光の街

下田市は、静岡県の東南部に位置しており、天城山系の南端から太平洋に至るまでの自然豊かなエリアです。年間平均気温が約17℃と温暖で、降水量も豊富なため、亜熱帯系の植物や果実なども楽しめます。

白い砂浜の美しいビーチが魅力で、夏場には地元の方をはじめ、海水浴を楽しむ観光客でにぎわいます。

また、下田は幕末期に日米和親条約によりペリー提督が率いる米国海軍が来航したエリア。開国の歴史のまちとして、数々の歴史的なエピソードが残されています。

伊豆急下田駅から東京駅までは2時間30分ほどでアクセス可能ですが、さらに時間を要するケースもあります。自動車の場合は、3時間程度はかかると考えておきましょう。

下田市で住宅を建築する際の費用は3,700万円が目安です。土地の価格は、直近は下落していますが、長期的に見ると安定した上昇傾向にあるといえます。

 

静岡県全体の家づくり平均相場・特徴

静岡県全体の家づくりの相場や特徴についても確認していきましょう。

静岡県の公示地価は平均88,824/㎡、坪単価では293,633/坪で、都道府県ランキングでは14位です。土地の価格は直近3年間では上昇傾向にあり、資産としての価値が上がっているといえます。

住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」のデータをもとに計算すると、静岡県で注文住宅を建築する際の費用総額は、平均で約4,505万円となります。注文住宅を建設するのみの場合は3,600万円、土地付き注文住宅の場合は3,300万円ほどです。土地取得費としては、120万円程度が相場となっています。

土地の価格は、全国的に見ると首都圏では上昇または横ばい傾向にあり、地方では下落傾向にあります。静岡市の地価は、ここ近年は下落傾向にあるのが現状です。

なお、静岡県全体や中部エリアの費用相場・特徴については、以下の記事でも紹介しています。

<関連記事:静岡県中部の家づくりで必要な金額は?費用相場・エリアの特徴を解説>
https://www.sbs-mhc.co.jp/column/moneyplan/240501/

 

東部・伊豆エリアで地価・土地価格が高いのは長泉町

静岡県東部・伊豆エリアで地価・土地価格が高いのは長泉町です。公示地価は平均126,857/㎡、坪単価は419,362/坪で、変動率は+1.17%となっています。

 市街地や駅周辺エリアを中心に土地価格が上昇傾向にあり、今後もこの傾向は続くと予想されます。

 最も土地価格が高額なのは「三島駅」エリアで、平均地価は17422/㎡、坪単価は563,379/坪です。次いで、「三島広小路駅」エリアが平均地価149,666/㎡、坪単価が494,765円となっています。

東部・伊豆エリアで地価・土地価格が安いのは南伊豆町

静岡県東部・伊豆エリアで地価・土地価格が安いのは南伊豆町です。公示地価は平均24,433/㎡、坪単価は8771/坪で、変動率は△1.60%となっています。

 南伊豆町で土地価格が最も高額なのは、「下賀茂字日詰」で29,600/㎡、最も低額なのは「妻良字東条」で1500/㎡です。

 南伊豆町の土地の価格は長期的に低迷している傾向があり、2021年からはさらに下落が続いている状態です。

静岡東部・伊豆エリアで家づくりするならまずは展示場へ

静岡県東部・伊豆エリアは首都圏へのアクセスも良く通勤・通学の圏内に入ります。仕事や学校は首都圏まで出向き、静岡県東部や伊豆エリアでゆっくり身体を休める、というライフスタイルもおすすめです。

 しかし、市町ごとにそれぞれ特徴があり、住宅を建築する際の費用も異なるため、どのエリアにどのくらいの規模の住宅を建築するか、よく検討することが大切です。

 静岡県東部での家づくりを始める際には、わからないことや不明なことがあることでしょう。そのような場合は、まずは展示場へ足を運び、具体的なイメージをつかむことをおすすめします。