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災害に備えた家づくりのポイントは? 抑えておきたい3つのポイントを解説

執筆者
ライター:Tsun (2級ファイナンシャル・プランニング技能士)

2024年1月に発生した「令和6年能登半島地震」により犠牲となられた方々に心よりお悔やみ申し上げるとともに、
多大な被害に遭われた皆様ならびにそのご家族、関係者の皆様に対し、お見舞い申し上げます。
また、被災された皆様、救助・復旧にご尽力いただいている皆様の安全と、一日も早く平穏な日常が戻ります様心よりお祈り申し上げます。

※本記事は2023年12月に掲載した記事です。ご覧になられる皆様の防災・災害の備えに対し少しでも寄与できましたら幸いです。

 

日本は地震や台風といった自然災害の被害が多い国です。その中でも静岡県は今後の発生確率が高いとされる南海トラフ地震の影響を大きく受けるといわれています。

地震や台風などの災害から住宅や家族の生活を守るためにできることは何でしょうか?

本記事では、災害に備えた家づくりの3つのポイントを詳しく解説します。災害による被害の実態や地盤、住宅の構造といった家づくりに直接関わる内容です。

今家づくりを検討している方や「家づくりはまだ先だけど災害対策は気になる」という方は、ぜひご覧ください。

家を襲う災害リスクとは

日本は、地震や台風といった自然災害が頻繁に発生する国です。特に静岡県は、今後30年以内にマグニチュード8〜9クラスの南海トラフ地震が発生する確率が70〜80%とされています。

南海トラフ地震では東日本大震災をはるかに上回る被害が想定されており、暮らしを守るために、自然災害に強い家づくりは不可欠です。

耐震設計の基準、災害に強い住宅の選び方、災害リスクを把握する方法、家族を守るための緊急時対策など、安全かつ快適な暮らしを実現するために、今から準備を始めましょう。

●自然災害の発生状況

参照:中小企業庁

日本は今まで、非常に多くの自然災害を経験しています。統計によれば、あらゆる自然災害の中でも台風による災害の発生件数が全体の約57.1%と最多です。

一方で自然災害による被害額を見てみると、総被害額の80%以上を地震が占めています。次いで被害額が大きい災害は台風14.0%、洪水3.3%です。

このデータは地震の破壊力と経済的な打撃の大きさを物語っています。日本に住む私たちは、起こり得る自然災害を踏まえてリスクを正確に理解し、適切な対策を講じる必要があるでしょう。

●日本住宅は災害危険と隣り合わせ

日本は地形・地質・気象の特性により、季節を問わず災害に見舞われやすい厳しい環境にあります。

日本の国土は約7割が山地や丘陵地で、土砂災害や洪水が起きやすい地理的条件が揃っており、梅雨や台風による大雨の際に大きな災害が発生する地域もあります。国土が台風の通り道となっている点も、災害が多い要因といえるでしょう。

さらに、気象庁のデータによると日本の年平均気温は世界平均の上昇率を上回り、気候変動によって大雨や短時間強雨の発生が増えているといわれています。

日本で発生する可能性のある災害は地震や台風などさまざまです。新築住宅の建設はあらゆる種類の災害に備え、防災対策を含めた住まいの設計を検討しましょう。

●静岡県で気を付けたい地震・台風被害

静岡県は、南海トラフ地震や富士山周辺の地震活動による影響を受けやすい、地震リスクが高い地域といえます。県内には活断層帯が広がり、地震による建物等の倒壊や家財の破損に加え、海が近いことから津波や液状化現象のリスクも高いと指摘されています。

また、静岡県は台風による暴風雨に見舞われるケースがあり、河川の氾濫や土砂災害の可能性も忘れてはいけません。令和4年に発生した台風15号による被害は、静岡市だけで住宅全壊延べ4棟、半壊・一部損壊は延べ5,000棟を超えました。床上・床下浸水も延べ1万棟近く発生し、大きな被害を受けています。

今後も大きな地震や地震に伴う津波、台風による被害が想定されるため、住宅の建築を検討するエリアの地盤を確認したり、水災・風災に備えて対策を考えたりする必要があるでしょう。

災害に強い家を建てるために押さえておきたい3つの観点

災害に強い家に押さえておきたい3つの観点は以下のとおりです。

 ◆地盤の強さ
 ◆構造の強さ
 ◆保険やローンで万が一に備える

今後の地震発生に備え、住宅を建築する前に地盤や住宅の構造について確認すると良いでしょう。また災害にあった際の経済的な負担を軽減し、早期に生活を再建するためには、火災保険や地震保険による備えも重要です。

1つずつ詳しく解説していきます。

●地盤の強さ

安全な住まいづくりには、強固な地盤が不可欠です。地盤が弱いと地震の際に、建物が倒壊する要因になるかもしれません。

地盤の強度を確認するといっても、「素人には難しそう」と思われる方もいるでしょう。そこでご紹介したいのが、国土交通省の「重ねるハザードマップ」です。

参照:重ねるハザードマップ|国土交通省

「重ねるハザードマップ」では、災害リスクや土地の成り立ちなどを地図に重ねて表示できます。気になるエリアをクリックすると「土砂災害に注意」「液状化しやすい」「地震で揺れやすい」などの災害リスクを確認できるため、地盤に詳しくなくても地盤の強さや災害の可能性を確認できます。

また、実際に住宅を建てるときには必ず地盤調査をしましょう。一戸建てであればスウェーデン式サウンディング方式という簡易的な調査方法が一般的です。地盤調査には費用が必要ですが、今後長年に及ぶ家族の安心・安全を考慮すれば必要な出費といえるでしょう。

ハザードマップ

そもそもハザードマップとは、自然災害による被害を予測して被害範囲を地図化したもので、被災想定区域や避難場所・避難経路といった防災関係施設の位置を示しています。そのため、被災時だけではなく住宅建築の候補地探しのツールとしてもおすすめです。

例えば国土交通省が運営するハザードマップポータルサイトでは、身の回りに起こり得る災害のリスクを調べられます。

参照:ハザードマップポータルサイト|国土交通省

ハザードマップポータルサイトから先程の「重ねるハザードマップ」を表示させることができ、調べたいエリアの気になる災害を指定してハザードマップを表示させる機能もあります。

参照:ハザードマップポータルサイト|国土交通省

上記のようにエリアと気になる災害を指定して、検索してみましょう。各自治体の公式サイトに移動し、ハザードマップの一覧が表示されます。

参照:土砂災害ハザードマップ|三島市公式サイト

静岡県においても、特有の自然環境に対応した「みんなのハザードマップ」を提供しています。「みんなのハザードマップ」では、静岡県内の特定の地域におけるさまざまな災害リスクが閲覧可能です。

参照:みんなのハザードマップ|静岡県

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や静岡県の「みんなのハザードマップ」を活用して、居住地域における地盤の強さや自然災害のリスクを把握し、万が一のための準備を進めましょう。

静岡県の地盤の強さ

静岡県の平野部には、静岡市や沼津市をはじめとする、柔らかい地盤の広がる地域があります。これらの地域では、地盤の特性を十分に考慮した上で新築住宅の計画を進める必要があるでしょう。

地盤の強度は住む人々の安心・安全にとって非常に重要であり、見過ごせないポイントです。

新築で住宅を建てる際は、正確な地盤調査に基づいて適切な地盤改良を施したり、地盤が弱そうな土地を避けたりして、リスクを回避しましょう。

●構造の強さ

安全な住まいづくりの基礎となる地盤について調べたら、次は地震の揺れに強い住宅を建てるのがポイントです。

たとえば建物が地震の揺れに強いかどうかは、建物の構造と使用される材料に大きく依存します。地震によって建物には上下方向の力が加わりますが、その力の流れをスムーズにさせて、住宅自体に大きなストレスがかからない構造にすると良いでしょう。

また屋根材は、重い瓦よりも軽量なコロニアルやガルバリウム鋼板を使用すると、階下への荷重を抑えられるため地震によって倒壊するリスクを軽減できます。

住宅の構造

住宅の耐震性を高める主な方法は以下の3つです。

 ◆耐震構造:地震の揺れに耐える
 ◆制震構造:地震の揺れを吸収・制御する
 ◆免震構造:建物に地震の揺れを伝えない

耐震構造は、建物自体が地震の揺れに耐えられるように、柱や梁・耐力壁・基礎などの構造体を強化し、建物全体として揺れに耐える構造です。多くの一戸建て住宅で採用されており、筋交いや耐力壁を用いることで建物の揺れに強い住宅になります。

制振構造は、建物内部に特殊な装置を設置して地震のエネルギーを吸収し、揺れを減少させる構造です。この方法は特に3〜5階建てのマンションなどで好まれ、建物へのダメージを軽減させる効果があります。

免震構造は、建物と基礎の間に揺れを吸収する特殊な装置を設置して、地震による揺れを建物に伝えないようにする構造です。一戸建てで利用されるケースは少なく、マンションなどで採用されます。

停電や災害に備えた設計

家を建てる際には、日常の快適さだけでなく災害時に対する備えも考慮した建築計画が大切です。

大規模な災害発生時には、広範囲において停電が発生する可能性が高いと考えられ、日常で必要な照明器具や通信機器が使えなくなるかもしれません。電気が使えないと不便なだけではなく、必要な情報が入りづらくなるなどの不都合も考えられます。

停電に備えた住宅設備としては、太陽光発電や蓄電池が挙げられます。

太陽光発電は、太陽の光エネルギーを電気に変換し、自宅で利用できるシステムです。日常的に電力コストを削減しつつ災害時には自立した電力供給源として機能します。

蓄電池は発電した電力を貯められる設備です。太陽光発電は太陽が出ている時でなければ電力を供給できませんが、電気を蓄電池に貯めておけば天候や時間帯にかかわらず電気を利用できます。

加えて、太陽光発電や蓄電池は二酸化炭素の発生が少なく、環境に優しい設備です。災害に強く、環境に配慮した家づくりを心がければ、長い間安心して暮らせる住環境となるでしょう。

SBSマイホームセンターでは出展社の情報を掲載しており、下記サイトから施工事例を検索することができます。災害に強い家についてもキーワードを入れて検索し、チェックしてみてください。

<SBSマイホームセンター 住宅会社施工事例>
https://www.sbs-mhc.co.jp/info/construction/

●各種保険に加入しておく

自然災害によって大きな被害が発生すると、精神的・経済的に大きなダメージがあるでしょう。その中でも経済的な備えは、その後の生活再建に必要不可欠です。

ここでは、災害に備えられる保険について解説します。地震や水災・火災・風災などによる損害をカバーできる保険について学びましょう。

ローン返済中の災害で被災するとどうなる?

住宅ローンの返済中に被災し、自宅が倒壊したり津波で流されたりしても基本的にローンの返済は続きます。

被災状況によっては被災者生活再建支援法による給付金の対象となり、市町村への申請を通して被災者生活再建支援法人から最大300万円の支援金を受けられる可能性があります。しかし、住宅の建て替えや修繕費用としては足りないかもしれません。

通常の住宅ローンは被災しても返済が続きますが、ローンの支払が免除される自然災害時債務免除特約を取り扱っている金融機関(SBI新生銀行や三井住友銀行等)もあります。例えば三井住友銀行では、建物が全壊の場合、24回分の支払いが免除されます(各種条件あり)。なお、金融機関や災害の程度、被害の大きさに応じて支払い免除回数が異なります。

また、特約を付加する条件には借入金額や住宅の建築年数などがあり、金融機関によっては金利が上乗せされるケースもあるため、事前に内容を確認しましょう。

保険で万が一に備える

住宅の損害を補償する保険に加入し、自然災害による経済的なダメージに備えるのも大切です。住宅の損害を補償する保険には火災保険と地震保険があります。

火災保険は火災や風害・水害といった自然災害によって建物や家財に損害が発生した場合に補償する保険です。補償対象には建物本体や門・塀・物置などに加え、家具や衣服などの家財が含まれます。ただし地震や噴火によって発生した損害や地震に伴って発生した津波による損害は補償されません。

地震保険は地震や噴火、地震にともなう津波によって建物や家財に損害が発生した場合に補償する保険です。居住用建物または家財が損害を受けた時に保険金が支払われます。保険金額は損害の程度によって全損・大半損・小半損、または一部損に分けられています。

火災保険は広い範囲の被害をカバーするイメージですが、地震による被害は補償されません。地震による被害を補償する地震保険も合わせて検討し、万が一の経済的なダメージに備えましょう。

災害に強い家に関するよくある質問

災害に強い家に関する、よくある質問をまとめました。

 ◆災害に強い家の屋根に特徴はある?
 ◆災害に強い家の間取りに特徴はある?
 ◆住みながらできる災害対策は?

できる限り事前に疑問や不安を解消して住宅購入を進めましょう。

Q.災害に強い家の屋根に特徴はある?

軽量で丈夫なガルバリウム鋼板や屋根材と繋ぎ合わせてロックする防災瓦は、地震や風などの災害に強いといわれています。また屋根の形状として屋根の面が多い寄棟屋根や方形屋根は風の影響を受けづらい点が特徴です。

Q.災害に強い家の間取りに特徴はある?

正方形に近い間取りは地震の揺れに対して均等に力を分散できるため、耐震性が高まります。台風に強い間取りも正方形です。逆に間取りに凹凸があると力が偏りやすいため正方形に比べて災害強度は弱いといえます。

Q.住みながらできる災害対策は?

地震対策として家具の配置を見直したり、固定したりして転倒を防ぎましょう。また非常時に使えるように備蓄品を用意したり、水や保存がきく食料などを備えた防災バッグを作ったりするのも効果的です。

まとめ

今回は、静岡県で想定される自然災害のリスクとリスクに備えた家づくりのポイントを解説しました。ハザードマップなどを利用して地盤の強い地域を探したり、災害に強い構造や間取りを検討したりと今からできることはあります。

今すぐでなくても、住宅の購入や建築が気になりだしたら専門家の意見を聞いてみましょう。

SBSマイホームセンターでは、静岡県の補助金や助成金を含めた家づくりの相談に強い専門のスタッフが揃っています。家づくりをご検討の方は、ぜひ一度ご来場ください。

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