住宅設備

子育て家庭に床暖房は必要?メリット・デメリットを徹底解説

執筆者
出口 恵

ひなたぼっこをしているような、やさしいあたたかさの床暖房。冬でも寒さを気にせず快適に過ごすことができる人気の設備です。一方で床暖房の費用面が心配で、導入を迷っている方も多いかもしれません。「わが家に床暖房は必要?」そんな疑問を解決するヒント満載でお届けします。

床暖房が心地よいのはなぜ?

私たちが住む静岡は、全国的にみても温暖で過ごしやすい地域。暖房器具をつかう期間も、寒冷地と比べるとそれほど長くありません。それでも床暖房を検討する理由は、〈モデルハウスや友人の家で床暖房を実際に体感して、あまりの心地よさに感激したから!〉という方が多いように思います。

やさしくてぽかぽか。床暖房のあたたかさは、エアコンやヒーターなどの他の暖房器具とは大きく違います。例えるなら、ひなたぼっこをしているような、やわらかいあたたかさ。そこには、部屋をあたためる仕組みの違いが関係しています。

暖房の種類には、次の3つがあります。

1)対流式

あたたかい風や空気を出し、それを循環させて部屋をあたためる。

例→エアコン・ストーブ・ファンヒーター

 2)輻射(ふくしゃ)式

赤外線を放出して、床・壁・天井などの部屋そのものをあたためる。

例→ハロゲンヒーター・オイルヒーター

3)伝導式

器具が発熱して、それに触れることであたためる。

例→ホットカーペット・電気毛布・湯たんぽ

床暖房はどれに当てはまるのでしょうか?じつは、3つすべてを備えています。

・床から足に伝わる「伝導熱」

・あたためられた壁や天井から伝わる「輻射(ふくしゃ)熱」

・輻射熱によってあたためられた空気の「対流熱」

「あたたかい空気は上にいく」というのはよく知られた話。そのため、床暖房は足元から上方向に部屋をあたためるイメージをもっている方も多いかもしれません。しかし実際は、床だけでなく、壁・天井などから部屋全体を均一にあたためてくれます。そのため、他の暖房器具をつかう場合と比べると、低めの室温でも全身にあたたかさを感じることができるのです。これが床暖房の心地よさのヒミツです。

床暖房の2つの種類

床暖房には大きく分けて「電気ヒーター式」「温水循環式」の2種類があります。

電気ヒーター式

床下材に発熱体を内蔵し、電気を通すことであたためるタイプ。電気ヒーター式床暖房はさらに以下の3つに分けられます。

・発熱体の熱線部分に電気を通して放熱する「電熱線式」

・夜間電力を利用して蓄熱体をあたため、昼間に自然放熱させる「蓄熱式」

・自己過熱抑制機能により無駄な発熱を抑える「PTC発熱ヒーター式」

温水循環式と比べると、

〇初期費用が抑えられる

〇定期的なメンテナンスが不要

〇耐用年数が長い

という特徴がある一方で

×ランニングコストが高い

×立ち上がりが遅い

といった弱みもあります。

温水循環式

電気やガスで温水をつくり、それを床下に敷いた温水マットなどに循環させることで部屋をあたためるタイプ。温水をつくる主な熱源は、以下の4つです。

電気/ガス/電気・ガス(ハイブリッド)/灯油

電気ヒーター式と比べると、

〇ランニングコストを抑えられる

〇立ち上がりが早い

〇部屋全体をムラなく均一に暖められる

という特徴がある一方で

×初期費用が高い

×定期的なメンテナンスが必要

といった注意点もあります。

設置したい面積が広い場合や使用時間が長い場合は、温水循環式の方が長期的なコスパはよくなります。一方で、リビングだけ、キッチンだけなど限られた範囲に設置するのなら、電気ヒーター式の方が割安です。

床暖房のメリット【一般編】

以上のような床暖房の仕組み・特徴をふまえ、あらためて床暖房のメリットをまとめてみます。

メリット1.温風による乾燥・ホコリの舞い上がりが気にならない

温風を出す暖房器具の場合、「あたたかい風が直接顔にあたるのが苦手」という方が多いです。女性は特に、お肌の乾燥が気になりますね。さらに感染症予防の面でも、乾燥はなるべく避けたいところ。もちろん、床暖房もまったく乾燥しないというわけではありませんが、温風を出すタイプと比べると、湿度の変化はゆるやかです。

また、風を出さない床暖房は、ホコリなどの舞い上がりも気になりません。花粉やアトピー、喘息でお悩みの方にとっては、安心できるポイントではないでしょうか。

メリット2.お手入れ・掃除に手間がかからない

床暖房には、エアコンのフィルター掃除のような日常的なお手入れはほぼ不要です。また、ストーブやファンヒーターのように床に置くものでもないため、日々の床掃除もスムーズに行うことができます。お掃除ロボットを使用しているご家庭や、なるべく物を置かずにスッキリ暮らしたいという方にとってはうれしいポイントでしょう。

メリット3.収納に困らない

ストーブやファンヒーターのように、オフシーズンの収納場所を考える必要がない点も、床暖房のメリットです。その分、収納スペースを有効につかったり、他の間取りを広めにとったりすることができますね。

床暖房のメリット【子育て編】

つづいて、子育て世帯にとっての床暖房のメリットを、安全に使用するための注意点とあわせてご紹介します。

メリット1.やけどや事故の心配が少ない

小さなお子さんがいるご家庭でストーブやファンヒーターをつかう場合は、柵を設置するなど、やけどや事故防止に気をつかっていることが多いと思います。一方で、床暖房なら熱源に触れてしまう心配はないため、家の中を元気にハイハイしたり歩き回ったりさせてあげることができますね。

ただし床暖房の場合も「低温やけど」には注意が必要です。

・温度設定に気をつける

・赤ちゃんが長時間過ごす場所にはマットや断熱材を使用する

・昼寝は床暖房の上ではしない

以上のようなことに気をつけましょう。

メリット2.子どもも大人も快適に過ごせる

あたたかい空気は上にたまります。そのため、他の暖房器具では同じ部屋にいても、身長差のある小さなお子さんと大人では、室温の感じ方に差が出てくる場合もあります。その点、床暖房なら均一に部屋をあたためることができるため、誰にとっても快適な室温に保つことができます。

ただしここでも注意点が。小さなお子さん、特に赤ちゃんはとても汗っかきです。快適な室温でも、大人の想像以上に大量の汗をかいていることがあります。そのため、脱水症状には注意が必要です。これは、床暖房にかぎったことではないのですが、暖房器具を使用するときには、厚着をさせすぎないこと、赤ちゃんの様子に気を配ることを心がけましょう。

メリット3.勉強がはかどる

頭寒足熱(ずかんそくねつ)という言葉をご存知でしょうか。足元をあたため、頭は冷やした状態にすること。昔ながらの健康法ですが、学習の際にも最適で、勉強の効率を上げる方法としても知られています。

先にもご紹介した通り、床暖房は輻射(ふくしゃ)熱により、他の暖房器具をつかう場合と比べると、低めの室温でもあたたかさを感じることができます。さらに足元は、床からの伝導熱でしっかりとあたたまります。まさに頭寒足熱の状態ですね。お子さんだけでなく、在宅で仕事をするパパやママにとっても、仕事の効率が上がる環境をつくることができます。

床暖房のデメリット

ここまで床暖房のメリットをご紹介してきましたが、もちろんデメリットも存在します。

デメリット1.初期費用が高い

どのような種類をえらぶかにもよりますが、床暖房の相場は一畳あたり5万~10万円と言われています。エアコンなど他の暖房器具の場合、10万円を出せばかなりよいものが購入できますね。家づくりではこだわりたいポイントが他にも多くあると思いますので、優先順位をしっかりと決めることが重要になりそうです。

デメリット2.ランニングコストがかかる

床暖房そのものの性能や、使用時間、気密・断熱といった住宅性能によっても大きな差が出てきますが、床暖房とエアコンの光熱費を比較すると、次のようになるケースが多いです。

【電気ヒーター式vsエアコン】 エアコンの方がお得

【温水循環式vsエアコン】   あまり差はない

​最近では石油・石炭の価格が高騰しており、電気・ガス料金は値上がりしつづけています。せっかく床暖房を設置したのに光熱費が気になってつかえない…というのでは残念。ランニングコストは軽く見ず、無理なく使用できるかシミュレーションすることをおすすめします。

デメリット3.定期的なンテナンスも必要

日頃の手入れは不要で、耐用年数も30年~と長い床暖房ですが、定期的なメンテナンスは必要です。温水循環式の場合は、使用していると水分が減ってしまうため、年に1回、不凍液の補充をします。また5~10年に1回は、不凍液の全量を交換することになります。他の暖房器具と比べると少ないですが、まったくのメンテナンスいらずというわけではないことを知っておきましょう。

デメリット4.あたたまるのに時間がかかる

床暖房を起動してから快適な温度になるまで、最低でも一時間ほどかかるものが多いです。帰宅や起床にあわせたい場合はタイマーを利用することで解決しますが、急に部屋をあたためる必要ができたときには困ります。また、ほんの短時間だけあたためたいという場合にも不向きです。

まとめ|最新の床暖房を体感しに行こう

 床暖房のメリット・デメリットの両方をふまえ、わが家には床暖房が必要か?ぜひじっくりと検討していただけたらうれしいです。

 SBSマイホームセンターサイト内の「モデルハウス検索https://www.sbs-mhc.co.jp/search.php」では、「設備→床暖房」のキーワードで絞り込み検索が可能です。気になる費用面ですが、住宅会社によっては地熱を利用した省エネの床暖房などを提案しているところもあります。住宅性能も床暖房も日々進化していますので、ぜひ最新の床暖房を体感しに行ってみてくださいね。