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2025年05月31日 (土)

耐震等級3とは?どれくらい地震に強いのかや認定を受けるメリットを解説

執筆者のイメージ
木内菜穂子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

この記事では、住宅購入に際して地震対策に関心のある方に向けて、「耐震等級3」の特徴やメリット・デメリットなどを解説します。地震に強い住宅を選び、家族を守り安心した生活を送るためにお役立てください。

住宅が地震に耐えられる性能を示すものとして「耐震等級」があります。1から3までの3段階に分かれており、耐震等級3は最も耐震性能が高いことを意味しています。

では、耐震等級3の住宅は、実際にどのくらいの震度に耐え得るのでしょうか。また、耐震等級1や2とはどういった違いがあるのでしょうか。この記事では、耐震等級3の特徴や認定を受けるメリット・デメリット、家づくりのポイントなどについて解説します。

耐震等級3とは?

住宅の耐震性能を示す指標として、「耐震等級」があります。耐震等級3とはどのような指標なのか、また、耐震等級1や2とはどのような違いがあるのか確認していきましょう。

最高レベルの耐震性能を持つ等級

耐震等級とは、建物の構造的な安定性を示す指標のひとつとして、地震が発生した際の建物の倒壊や損傷のしにくさを評価するために用いられるものです。建物の筋交いの有無やバランスの良い壁の配置、基礎や接合部の強化などで評価されます。
耐震等級は、等級1から等級3までの3つのランクに区分されており、耐震等級3は最も高い耐震性を示しています。具体的には、震度6強〜7の大地震でも倒壊・崩壊しない設計の住宅が該当します。

耐震等級1や2との違い

耐震等級は、「倒壊等防止」と「損傷防止」の主に2つの点で評価されます。
耐震等級3は、3つのランクの中で最も耐震性が高いですが、等級1や等級2とはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの等級の特徴や該当する建築物などを解説します。

耐震等級1・建築基準法の最低基準
・数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない
耐震等級2・学校など公共施設の基準
・等級1の1.25倍の耐震性
・数百年に一度の大地震の1.25倍の力でも倒壊・崩壊しない
耐震等級3・警察署や消防署など防災拠点の基準
・等級1の1.5倍の耐震性
・数百年に一度の大地震の1.5倍の力でも倒壊・崩壊しない

耐震等級1

耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たす等級です。
「数十年に1度発生するような地震(震度5強)でも損傷しない」「数百年に一度の大地震(震度6強〜7)でも倒壊しない」ことが基準とされています。
ただし、基準の範囲内において、損傷を受ける可能性があることに注意が必要です。また、大規模な地震が発生した場合、補修や建替えが必要な可能性もあります。

耐震等級2

耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の耐震性能を持つ等級です。大地震(震度6強〜7)の1.25倍の地震に耐えられる強度があることを意味します。
耐震等級2は、長期優良住宅(長期にわたり良好な状態で使用できる優良な住宅)の認定基準のひとつとされており、災害時に避難所として利用される学校などの公共施設も、当基準を満たしています。
数百年に一度の大地震でも損傷は軽微で済むため、補修すれば住み続けられるレベルとされています。

耐震等級3

耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震性能を持つ最高等級となっており、警察署や消防署など防災拠点となる施設の基準となっています。
数百年に一度の大地震でも軽微な損傷で済むとされており、ほぼ無傷で住み続けることが可能です。
なお、一般的な2階以下の木造建築物で壁量計算による場合、「長期優良住宅」の認定を受けるためには、耐震等級3を有していることが要件のひとつとなっています。

耐震等級3はどれくらい地震に強いのか?

耐震等級3は最高基準の耐震性を誇ることがわかりましたが、実際にどのくらい地震に対して強いのでしょうか。過去の大地震のデータをもとに、建築物がどの程度の地震にどれくらい耐えられるのか確認していきましょう。

単発の巨大地震(震度7クラス)への耐性

2016年(平成28年)、熊本地震では震度7の地震が2回発生しています。4月14日にはマグニチュード6.5(最大震度7)の地震が、その後4月16日にマグニチュード7.3(最大震度7)の地震が続けて起こりました。

建築基準法レベルの建築物では約40%の建築物が倒壊・破損の被害を受けましたが、耐震等級3の木造住宅では倒壊・大破した建築物は0でした。

この結果より、東日本大震災[2] 、阪神・淡路大震災クラスの地震[3] が発生しても、耐震等級3の住宅であれば、倒壊を免れ軽微な損傷で住み続けられると考えられるでしょう。

連続して起こる地震や余震への対応力

日本では近年、震度6以上の大地震が頻発しており、今後30年以内にも震度6以上の地震が発生する確率は高いと見込まれています。
首都直下地震や南海トラフ地震といった、将来的に甚大な被害をもたらす恐れのある巨大地震に関するニュースも、見聞きする機会が多いです。
耐震等級3の建築物は、たとえ初回の地震で損傷を受けても、その後の地震に耐え得るだけの性能があります。今後の地震による被害を最小限に抑えるためには、耐震等級3が望ましいと考えられます。

耐震等級3の認定を受けるメリット・デメリット

住宅を取得する際に耐震等級3にするかどうかは、メリットとデメリットを比べたうえで必要性を判断することが大切です。
耐震等級が上がると安全性も向上しますが、一方で建築費用も高くなるため、耐震等級を含めて優先順位を付けて予算を割り当てる必要があります。

メリット

耐震等級3の住宅を取得すると、次のようなメリットがあります。

資産価値が下がりにくい

耐震等級3の住宅は、将来的に資産価値の確保ができるというメリットがあります。というのも、客観的な評価によって耐震性能の高さが認められており、不動産市場で高値で取引きされることが多いためです。
高い耐震性能を有していると、購入希望者からの信頼も得やすく、売却には有利です。耐震等級3の住宅は、耐震性能だけでなく資産としても評価が高いといえるでしょう。

地震保険料が最大50%割引される

耐震等級が高いほど、地震で被害を受けるリスクが低いため、地震保険料の割引率が大きくなる傾向があります。

等級保険料の割引率
耐震等級350%
耐震等級230%
耐震等級110%
参照:地震保険制度の概要 : 財務省

割引率は地震保険の種類によって異なりますが、耐震等級3では50%、耐震等級2では30%、耐震等級1では10%割り引かれるのが一般的です。
地震保険は、住宅取得時から30年や35年といった長い期間加入するものであるため、継続してコストが抑えられるのはメリットです。

住宅ローン金利の優遇や税制面での恩恵がある

耐震等級3に認定されると、住宅ローンの金利優遇を受けられる可能性があります。たとえば、長期優良住宅で一定の要件を満たした場合に利用できるフラット35Sでは、フラット35のローン金利を一定期間引き下げる優遇措置が設けられています 。
ほかにも、所得税における住宅ローン控除や固定資産税の減税、贈与税の非課税措置といった、税制上の特例措置の対象になっていることも魅力です。

デメリット

耐震等級3にはさまざまなメリットがありますが、一方で気を付けたいデメリットもあります。

間取りに制限がでる

耐震性能を上げるためには柱や壁の配置も重要になるため、間取りの設計が制限されることがあります。結果として、デザイン性と機能性のバランスを取るのが難しく、理想の間取りが作れない可能性が出てきます。
なるべく希望する間取りに近づけるよう、ハウスメーカーなどに設計の相談をすると良いでしょう。

建築費用が高くなる

より高い耐震等級を目指す場合、柱や梁を頑丈にしたり耐力壁を多く使用したりするなど、建物の構造を強化する必要があります。使用する材料の種類や量の関係上、建築費用が高くなる傾向があります。

耐震認定取得の費用がかかる

建築にかかる費用のほかに、耐震認定を取得するため書類(耐震基準適合証明書)の費用もかかるため、一般的な住宅よりも費用が高くなります。
耐震の認定手続きの流れや、具体的な金額については後ほど解説します。

耐震等級3の家づくりのポイント

耐震等級3の住宅を取得する際には、次の2つのポイントを意識すると良いでしょう。

適切な構造計算で耐震性能を確保

住宅の耐震性は、構造計算を行うことによって詳細に建物全体の耐震性を評価することが可能です。
構造計算には、簡易的な「壁量計算」と詳細な「許容応力度計算」の2つがあります。主に耐震等級2や3の住宅では「許容応力度計算」による設計が採用されており、より耐震性が確保できて安心です。

一般的な2階建て以下の木造住宅は構造計算が省略できますが、構造計算を行っている旨は建築会社の公式サイトで確認できる場合があります。建築会社によっては、公式サイトに「全棟構造計算を行い耐震等級を取得している」旨が記載されています。

耐震性を高める建築技術の活用

耐震性を高めるために、さまざまな建築技術を活用する必要もあります。主な技術として以下のものが挙げられます。

また、技術のほかにも耐震性能は施工の品質管理も重要です。建築基準法の基準のほかに、独自の品質管理基準を設けている業者もあります。

耐震等級3の認定にかかる費用と手続き

耐震等級3を証明する「耐震基準適合証明書」を取得する際の費用の目安や、手続き方法を確認しましょう。

認定のための評価と審査にかかる費用

耐震基準適合証明書を発行する際の費用は、第三者機関による設計図の評価や現場検査などで、10〜30万円程度が目安となります。
そのほか設計料や材料費なども含めると、一般的な住宅の場合、数十万円の追加費用がかかることがあります。ただし、住宅の規模や設計内容、建築会社によっても異なります。
より詳しい費用を知りたい場合は、あらかじめ相談して見積もりを取りましょう。

認定を受ける際の手続きの流れ

耐震等級3の認定書類を請求する際の手続きは、一般的に次のような流れで行います。
新築住宅の場合は、はじめに新築をお願いする工務店などに相談すると良いでしょう。

  1. 設計段階で評価機関に「設計住宅性能評価」を申請(書類審査)
  2. 「設計住宅性能評価書」の交付を受ける
  3. 建設工事を実施する
  4. 工事途中と完了時に「建設住宅性能評価」を申請する
  5. 現場検査が行われる
  6. 「建設住宅性能評価書」が交付される 

設計段階で工務店などに相談すると、手続きの代行を頼めます。
建築後に認定を受けることも可能で、その場合は評価機関へ「既存住宅の建設住宅性能評価書」を申請することになります。

注意したい「耐震等級3相当」との違い

「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は似た言葉ですが、全く異なるものであるため注意が必要です。
耐震等級3が評価機関により公的に認められたものである一方、耐震等級3相当は耐震等級3に相当する性能基準を満たしていたとしても、評価機関で認定をされていないため公的な証明がなく、性能が不明確なものになります。
また、耐震等級3相当の場合、地震保険料の割引や住宅ローン金利の優遇などが受けられないため、表記には十分気を付けましょう。

まとめ

耐震等級3は、最高水準の耐震性能を有しており、震度7の地震にも強いという特徴があります。耐震等級3が認められると、地震保険料の割引や住宅ローンの金利の優遇といったメリットを享受できます。

耐震等級を上げるほど建築費用は高くなりますが、長期的な安心が得られるうえに、資産価値を維持できる可能性があることが魅力です。
ハウスメーカーや工務店、設計事務所などとしっかり相談し、適切な認定を受けることが大切です。また、住宅展示場での相談も対応しておりますので、気軽に尋ねてみましょう。

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