建築・間取り

現場監理の意義

執筆者
建築士事務所協会 会員  山梨一級建築設計事務所 山梨一正

 設計事務所の仕事は、プラン・設計図書作成・現場監理・官公庁への申請の代行などが主な業務です。プラン・導線計画・外観などは、意匠的なセンスの要素が主になります。良い家創りはデザイン機能に優れているだけでは十分でありません。構造的にはどうでしょう?地震や雨風台風にも耐えられる家の力も計算しなければ安心安全な住宅とは言えません。

デザインだけで家を建てるのは危険

 昨今の異常気象によるがけ崩れや、地震。いつ起こるかわからない自然災害にも考慮した家創り。同じ場所で築年数もさして変わらない家で、崩壊する・しないに別れるのは何故でしょう?それは、屋根の重みの違い、壁量の違い、直下率の違いも関係していると思います。1階の柱と同じ位置に2階の柱が乗ってくると、2階の柱を受ける柱が下にあるので、加重的に安全です。反対に1階が居間等で、開口部が広く柱と柱まで空いている距離が長い場合。2階の間仕切りの柱を受け止める柱が1階にないので、加重がもろにかかって来ます。2階の柱のうち、その真下に1階柱がある割合の事を柱直下率と言います。同じ様に2階と1階の同じ位置に壁があるのを壁直下率と言います。この直下率の割合が家の強度に大きく影響します。此処まで考えれば、センスも良くて頑丈な家が出来そうです。

住みやすい家にするために

 次に設備面に目を向けましょう。オール電化のお宅も増えていますが、設備設計も快適な家創りに欠かせません。キッチンに必要なコンセントも冷蔵庫・電子レンジ・インターフォンの設置場所に使い勝手良く計画しませんと無駄な動きを強いられ、忙しい奥様の時間の浪費になってしまいます。居間・書斎では、TV・パソコンの数や設置場所の確認も怠れません。快適な住まいに設備計画は重要事項です。意匠計画・構造計画・設備計画は家創りの3大ポイントですから、工事着工前に疑問点の解決をし納得行く迄確認をしましょう。それでやっと工事開始となります。

現場管理の重要性

 綿密に打ち合わせをすれば、あとは設計図通りに行われていれば家創りは成功です。設計図通り工事が進んでいるか確認をする業務を工事監理と言います。工事監理は設計と同レベルにポイントを置きたい業務です。それは完成度が変わるからです。先日、ある方から、セカンド・オピニオンとしての工事監理を依頼されました。すでに、工事着工が進んでいた現場ですが、養生の怠りで室内に雨水が入ってしまったり、打ち合わせで決めた色が違っていたりと、業者さんにやや不信感を抱いてしまったお客様です。週1回の現場監理でしたが、お客様の不安な点のやり直しや精度の確認、現場指導をしました。セカンドオピニオンの立場を現場サイドの職人さんも理解してくれ、最後まで仕上げてくれました。お客様も安心された様で無事引渡しも済みました。家創りは最初から最後まで見届ける事が肝心であると改めて実感しました。現場監理をしっかり行ってもらう事忘れないで下さい。