住宅設備

家庭用蓄電池のメリットと注意点とは?

執筆者
増永 遥

エコエネルギーの普及に伴い「家庭用蓄電池」の導入が急増していることをご存知でしょうか。長く使用するものなので価格や種類など、事前に特徴を理解してから選びたいものです。今回は、家庭用蓄電池の選び方のポイントをご紹介します。メリット・デメリットについても解説しますので、比較検討する際にお役立てください。

家庭用蓄電池とは?

家庭用蓄電池とはバッテリーに電気を蓄えておき、必要な時に放電して繰り返し使える化学電池のことを言います。蓄電池は製品によって蓄えられる電気の容量が異なり、サイズも様々です。基本的には、蓄電容量が15kWh以下の小型のものを「家庭用蓄電池」と呼び、それ以上の大型のものは「産業用蓄電池」として販売されています。

災害時の非常用電源の需要が増えたことや、省エネ・創エネ設備を設けた「スマートハウス」の導入が進んだことにより、家庭用蓄電池の大容量蓄電システムが注目されるようになりました。

 家庭用蓄電池の導入が急増している背景

家庭用蓄電池の導入が急増している市場背景には以下のようなものがあります。

  • 2009年に開始された固定価格買取制度(FIT)が順次満了を迎えている
  • 国や地方自治体から補助金が出る
  • 製品ラインナップの増加であらゆるニーズに応えられるようになった
  • 災害対策としての需要が高まっている

固定資産価格買取制度(FIT)の終了によって売電のメリットが少なくなったことや、国・地方自治体が補助金制度を設けてスマート住宅の導入を推し進めたことにより、各メーカーも販売に力を入れ始めたことが家庭用蓄電池の導入の急増を後押ししています。

 2009年に開始された固定価格買取制度(FIT)が順次満了を迎えている

固定価格買取制度(FIT)とは、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」を用いて発電した電気を、国が固定の価格で買い取る制度です。ただし、FITの買取保証期間は10年と定められており、期間終了後は大幅に買取価格が下がってしまいます。

FIT期間の満了を迎えた場合、電力会社と再契約して売電を続けるよりも、なるべく自家消費する方が経済的です。発電した電気を無駄なく効率的に使うには、家庭用蓄電池の設置が欠かせません。そのため、卒FIT後に家庭用蓄電池を導入する人が増えています。

国や地方自治体から補助金が出る

2020年に、蓄電池設置にかかる費用に対して、国や地方自治体から補助金が出ることが発表されました。対象者は10kW未満の家庭用太陽光発電をすでに設置している人、またはこれから設置する人です。

補助金の最高額は60万円ですが、蓄電池の容量1kWhごとに金額が変わります。容量が小さいとそれだけ補助金の額が少なくなるので注意が必要です。また、蓄電池の種類によっても補助額が異なるため、申請前に対象者や補助額を確認しておきましょう。

製品ラインナップの増加であらゆるニーズに応えられるようになった

家庭用蓄電池への関心が高まったことにより多くのメーカーが家庭用蓄電池の販売を始め、製品ラインナップが増加してきしました。用途に合わせて太陽光発電と連携可能な「単相連系タイプ」、または電力会社から供給される電力だけを蓄電する「スタンドアローンタイプ」にするか選ぶことが可能です。

また、各メーカーが開発を進めたことによって蓄電容量やサイクル寿命が延び、様々なニーズに応えられるようになったことも、家庭用蓄電池の導入が急増した理由のひとつです。

災害対策としての需要が高まっている

洪水や地震などの大規模な災害が起こると、停電によって電気の供給がストップしてしまいます。家庭用蓄電池は電気を蓄えておけるので、停電時の非常用電源としても使用可能です。2011年の東日本大震災以降も、日本には毎年のように大規模災害が発生しているため、災害対策としての家庭用蓄電池の設置需要が年々増加し続けているのです。

家庭用蓄電池を設置する3つのメリット

家庭用蓄電池を設置するとどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の通りです。

  • 災害時に電気が使える
  • 太陽光発電の電気を自家消費できる
  • 深夜の割安な電力が使える

家庭用蓄電池を設置しておくと災害発生時に安心を得られるだけでなく、日常的な電気代の節約にもつながります。

災害時に電気が使える

電気の供給がストップすると、照明や電化製品など、身の周りのあらゆる機器が使用できなくなります。スマートフォンの充電もできず、必要な情報を手に入れることもできません。

しかし、家庭用蓄電池があれば、停電時に蓄えておいた電力を使うことができます。暗闇の中で不安な時間を過ごすことがなくなるため、停電が起こった時でも安心です。

太陽光発電の電気を自家消費できる

太陽光発電だけを設置している場合、発電は可能でも余った電力を貯めておくことはできません。FIT期間満了によって売電価格が大幅に下がってしまった場合は、そのまま売電を続けるよりも電力を自家消費するほうがお得です。

家庭用蓄電池があれば、太陽光発電で発電して余った電力を蓄電しておき、効率的に自家消費できます。

深夜の割安な電力が使える

電力会社には、夜間の使用電力が割安になる契約プランがあります。電気料金が安い深夜帯に蓄電池に電気を貯めておき、昼間に使用すれば、電気料金を抑えることが可能です。

また、昼間は太陽光発電の電力を使用し、余った電力を蓄電池に貯めて夜間に使うこともできます。そうすれば電力会社から供給される電気の量を大幅に減らせるため、より経済的です。

家庭用蓄電池を検討する際の3つの注意点

日々の電気代を抑えられ、災害時にも役立つ家庭用蓄電池ですが、設置にあたっては以下のようなデメリットもあります。

  • 初期投資費用が必要
  • 徐々にパフォーマンスが落ちる
  • 設置スペースが必要

スマートフォンのバッテリーと同様、電池には寿命があります。設置時に費用がかかるだけでなく、定期的に部品交換などのメンテナンス費用が発生することを理解しておきましょう。

初期投資費用が必要

最も大きなデメリットは初期投資費用がかかることです。家庭用蓄電池には電気代が安くなるという経済的メリットがありますが、初期投資を回収するまでにはある程度の期間が必要となります。また、一時的であっても手元の資金が減ってしまうのは大きなデメリットと言えるでしょう。

ただし、太陽光発電の設置を同時に行えば「ソーラーローン」が利用できるため、導入コストの負担を軽減できます。また、国や地方自治体の補助金制度を活用するのもおすすめです。

徐々にパフォーマンスが落ちる

スマートフォンの充電を繰り返すとバッテリーが劣化するのと同様に、家庭用蓄電池も使用していくうちに徐々に蓄電可能容量が少なくなり、サイクル寿命が減っていきます。「サイクル寿命」とは、蓄電池の寿命のことです。

メーカーや製品によっても異なりますが、家庭用蓄電池のサイクル寿命は約1015年とされています。

設置スペースが必要

家庭用蓄電池には「定置式」と「移動式」の2種類があります。定置式は据え置き型のため、設置スペースを確保する必要があります。移動式は「ポータブル式蓄電池」とも呼ばれており、狭い場所に置くことが可能です。しかし、小型なので蓄電容量が小さく、日常的な使用には向きません。一度設置すれば簡単に移動することはできないので、事前にスペースが確保できるかどうかよく検討しておくことが大切です。

家庭用蓄電池の価格相場

家庭用蓄電池の価格相場は、工事費を含めて100220万円程度です。蓄電容量が56kWhだと100万円以下で購入できるものもあり、初期費用は抑えられます。ただし、容量が小さいと十分な電量を貯めておけず、電気代が思うほどお得にならない可能性があるので、価格の安さだけでなく機能や寿命なども比較して選びましょう。

家庭用蓄電池の選びのポイント

家庭用蓄電池を選ぶ際にチェックしておきたいポイントは、以下の4つです。

  • 太陽光発電と連携可能タイプorスタンドアローンタイプ
  • 蓄電容量
  • サイクル寿命
  • 特定負荷型or全負荷型

各メーカーから数多くの家庭用蓄電池が販売されているため、住宅のタイプや費用対効果を考慮して選ぶことをおすすめします。

太陽光発電と連携可能タイプorスタンドアローンタイプ

「単相連携タイプ」は太陽光発電と連携可能な蓄電池です。太陽光発電と組み合わせて、一戸建て住宅で使用する場合に適しています。「スタンドアローンタイプ」は、電力会社から供給された電気だけを貯められる蓄電池です。小型なので一戸建てはもちろん、マンションや家庭用蓄電池の設置スペースを確保できない住宅にもおすすめです。

蓄電容量

家庭用蓄電池の平均的な容量は、約57kWhです。蓄電容量の大きい製品だと12kWhを超えるものもあります。使用する電気が多い家庭や、災害時に備えて十分な電気を貯めておきたい場合は、容量が大きい製品を選ぶのがおすすめです。ただし、蓄電容量が大きいものほど、設置費用は高額になるので、予算と用途に合った製品を選びましょう。

サイクル寿命

家庭用蓄電池を選ぶ際は、サイクル寿命についても確認しておくことが大切です。蓄電池では、容量が0%になった時点で100%まで充電し、再び0%まで使い切った状態を「1サイクル」とします。そのため、50%の時点で放電したり、0%になる前に蓄電し始めたりすると、カタログ表記のサイクル寿命とは持続性が変わるので注意が必要です。

なお、蓄電容量と同じく、サイクル寿命が多い製品ほど価格は上がる傾向があります。

特定負荷型or全負荷型

「特定負荷型」は、停電した時でも家の中の特定のエリアだけ電気が使えるタイプです。使用できるのは必要最低限の回路のみとなり、リビングだけ、ダイニングだけなど、同じ階でも電気が使えるエリアと使えないエリアが発生します。

「全負荷型」は、停電時にすべての部屋で電気が使用できるタイプです。全負荷型は設置費用が高額なため、停電時に使用したい電力量を考えて選ぶことをおすすめします。

まとめ

家庭用蓄電池は、災害時の非常用電源としてだけでなく、光熱費節約にもつながる便利な製品です。補助金制度や、太陽光発電と組み合わせたソーラーローンなどを活用すれば、初期費用を抑えてお得に設置できます。FIT期間が満了する方、災害対策や省エネルギーをお考えの方は、この機会に家庭用蓄電池の導入を検討してみてはいかがでしょうか。