建築・間取り

通風・採光の工夫された健康住宅

執筆者
建築士事務所協会 会員 山梨一級建築設計事務所 山梨一正

「健康住宅」ってどんな家?

 健康住宅!誰でも住みたいですね。では、健康住宅とはどの様な住宅でしょう?住宅においては、新しい法律が次々生まれ、規制も厳しくなっております。一時期、頻繁に話題となった、シックハウス症候群。化学物質を揮発しやすい新建材をつかった事と換気不足により、集中力の低下、目の痛み、不眠、頭痛、関節痛が発症した事例が多発し、今度は24時間換気が義務付けられるという結果になりました。めまぐるしいですね。

日本家屋が織りなす自然な空気の循環

 数年前に、定年退職後、奥様と二人健康的に暮らせる家を創って欲しいと依頼されました。そして、たまに訪れる孫達も迎え、皆が集い、穏やかに楽しく暮らせる場所を創りたい。その家を「風と遊ぶ安らぎの家」と名づけました。完成し、玄関を開けた時に、漂う桧の香りと、新しい畳の清清しい青色が心地よかった事。日本家屋には、暮らしの知恵がふんだんに生きています。長い軒は雨や日差しを除け、障子は自然のカーテンです。窓を開ければ、高い天井裏まで風が通り踊ります。壁は珪藻土という自然素材で、床は無垢材を使用。無垢の材料は暖さが心地良いのです。外から靴のままで入れる土間も作り、いつでも気楽にご近所・友人が立ち寄れる空間の演出もし、このスペースは大変お客様に好評でした。庭と室内が一体化し、新鮮な空気がいつも流れていますから、季節の日差しの変化、香り、空気がそれこそ24時間循環しているのです。木は生きて呼吸をしています。人も呼吸をしないと生きていけません。「本当に、家にいるとす~っと気持ちよい。」とお客様がおっしゃる意味が理解出来ます。

人が集まる居心地の良さ

 住宅とは、住む為の器ですから、デザインがおしゃれで素敵の前に、まずは居心地の良い空間であるか否かではないかと思います。聞けば、通学途中の小学生が、「トイレ貸して」「少し休ませて」と立ち寄るそうなのです。お客様のお人柄もありますが、子供心にも「ここい~な。」と思える場所に他ならないのではないでしょうか?

「自然の力を取り込む家」≠「健康住宅」

 日本の風土にあった家屋は、日本人の根っこの所に安心感を与えているのだと思います。夏の暑さ、冬の寒さを楽しむ工夫もしたいものです。最近の住宅で、高気密工断熱住宅と見聞きしますが、私の設計思想では違和感を覚えます。空気の流れは気の流れ!大自然のエネルギーを取り込んで心豊かに暮らそうではありませんか。採光・通風が良いと、暖房費の節約になり、それは地球温暖化を防ぐ事にも繋がります。人に優しく地球にも優しい健康住宅。お奨めです!