建築・間取り

子を磨く部屋

執筆者
鈴木 元一朗(グランドコンパス)

 どのように子ども部屋を与えるか。使用権はあるが所有権は渡さない欧米方式、一方で日本は所有権まで渡してはいないだろうか。日本の子供部屋の多くは、「鍵」の設置が当たり前になっていないか、掃除は母親の仕事、宿泊費も使用料も無い、治外法権の場であり、まるでホテル。その部屋では何が行われているのであろうか?勉強、ゲーム、ネット?


 所有権まで渡したのなら保守メンテナンスもさせるべきではないだろうか。掃除の仕方を教え、学ぶ機会になる。欧米ではベッドメイキングを躾けると聞く。ゲストが訪れた際には子供部屋をゲストの宿泊場所に提供しなければならないから。

 リアルな子供部屋の空間では、何が行われているのだろうか。電脳社会ともいえるバーチャルな空間での対話に一生懸命なのではないだろうか。情報過多の中で何を得て、何を考え、どんな価値観が創られているのか親は知っているだろうか?まさか、ホテルだから不干渉とでも言うのでしょうか。

 そもそも子供部屋を作るために家を建てようなんて思ってはいないだろうか、小学生、中学生になったから、子供部屋が必要だろうし与えてあげるのが親の務めだとでも思っているのだろうか。それは親のエゴではなかろうか。お子さんも交えて話し合ってみてはどうだろうか。参画させれば責任感や親の想いも伝わるのではないでしょうか。

 「自分の部屋で勉強しなさい」「お前のために子供部屋を作ったのだから自分の部屋に行きなさい」子供部屋を作ることが目的だとしたらこんな言葉が発せられるでしょう。せっかくの子供との会話のチャンスを自ら潰してしまうことになる。

 6、3、3で12年と昭和世代には懐かしいCMはご存知ですか、学習机の宣伝である。多くの子供たちが子供部屋という空間よりもこの机が欲しかった。机、引出し、ライト、椅子とシステムされ、まるで秘密基地のようで、さらにはキャラクターやアイドルが登場して、購買意欲を扇動された。12年も使うのだからとより高価なものを購入させる戦略ではなかっただろうか。次の4年の大学生活にもっていくにはあまりにも重すぎて、実家の子供部屋に置いたままか、インテリア性が高くないから次の世代には受け入れられず、処分されたか。

 その家具の置き方でも、声のかけ方が違う。漫画が好きな太郎君、手元が見えなければ「またマンガ読んでるの、たまには勉強しなさい」と言ってしまうであろう。もしその際に勉強していたら太郎君は傷つくに違いない。手元が見えれば正しい状況判断で声がかけられるであろうに。地震の際には寝ている上部に、このような机や本棚などの家具が倒れてこないように配置し、なおかつ固定することが望ましい。このような家具の配置方法がインテリアの基本だと思う。子供部屋の家具の配置を子供自身が工夫し試すことが空間把握や創造性を生むのではないでしょうか。子供部屋を作るのであれば楽しい空間であってほしい。