特集

プロが教える<旬感野菜> 〜旬を知り五感で味わう〜

執筆者
遠山 由美

 寒さが徐々に和らぎ、かすかに空気に溶け込んだ花の香が鼻腔をくすぐる季節。卒業や入学、初めての就職や引越し、会社での人事異動等々。心浮き立つ春は一方で、あわただしく変化の大きな時期。野菜のチカラを借りて、そんなストレスの多い春を健康的に過ごすコツを、野菜ソムリエの遠山先生にきいてみました。

 1 春は苦味を盛れ。ほろ苦春野菜と五味の関係


 沢山の食べ物と情報に囲まれ「視覚・臭覚・聴覚・触覚・味覚」の五感を使って食を楽しむ私達現代人。食べ物の美味しさは視覚・臭覚で8割決まるとされますが、「甘味・えん味・旨味・酸味・苦味」の味覚基本五味は食品中の栄養成分の現れであり「命を守るセンサー」として大変需要です。
 「甘味・えん味・旨味」はそれぞれ「炭水化物と脂質・ミネラル・タンパク質と脂質」に「酸味・苦味」は「腐敗物・毒物」に対応。「命と健康を維持するために何を食べ何を避けるべきか」を教えてくれています。前者は生まれながらに美味しいと感じる本能の味、後者は経験を経て食べられるようになる、文化・教育の味。動物に食べられてしまわないよう、柔らかな春野菜は苦味を作るのです。

 2 調理しすぎはもったいない。時短・簡単! 春野菜はそのままで


 春野菜。山菜や筍のように生の姿を見かけるのは春だけのものもあれば、一年中あるけれど、春だけ特別な姿・味わいになるものもあります。
 今回ご紹介するのは後者。まずはニンジンです。主に秋と春に収穫されますが、春のものは小ぶりで甘く、香りも穏やか。サラダやジュースなど生食にむきます。そしてキャベツ。お好み焼きを好む地域は一年中、寒玉と呼ばれる糖度が高くて巻きが堅く扁平な形のものを使いますが、静岡では巻きが緩くみずみずしくて柔らかな葉っぱがパリパリと小気味よい春玉が好まれます。また保存性を持たせるため、収穫後1か月ほど乾燥させた金色の玉葱と違い、収穫後すぐ出荷される白くて平べったくて辛味の少ない「お刺身タマネギ」の異名をもつ新タマネギもオススメです。  

 3 春のカラダとココロに嬉しい! 美味しい! 春野菜


  明るい陽光の中迎える門出の季節・春。希望にあふれた一歩を踏み出すかたがある一方で、気持ちの落ち込みに苦しむかたも少なくありません。緊張から「戦闘態勢神経」である交感神経ばかりが働き「休息促進神経」である副交感神経とのバランスが崩れ自律神経の不調が発生する、ストレスや強くなりだした紫外線により遺伝子や細胞が傷つけられ様々な体調不良を引き起こすとされる活性酸素が増加する、といったことが原因とされます。
 そこでオススメは春野菜を食べること。爽やかな香を楽しみながら深呼吸すれば自律神経が整いますし、良く噛むことがストレス解消に役立つリズム運動になりますし、色・香り・アクとして存在する抗酸化物質やビタミン・ミネラルの補給に役立つからです。


■まとめ
(1)「甘・旨・塩・酸・苦」の五味と五感を働かせ美味しく健康的に食べましょう
(2)一年中あるけれど「春だけの姿・味わい」をみせる野菜を楽しみましょう
(3)新しい環境、強くなりだす紫外線・・・春の体調不良には春野菜を!

 

■ものしり静岡情報
春野菜の情報は、東京がうららかな春らしい季節になると多くなります。が、桜前線よろしく、春野菜前線が静岡にやってくるのはそれよりずっと早く「初春」の頃から。年が明けたら意識しましょう。