静岡県データ

親世帯と子世帯の住まいのほどよい距離間は

執筆者
株式会社トムス 寺島知津

 総務省がこのほど発表した「労働力調査」によると、女性の就業者数がついに3000万人を超えたことが明らかになりました。これまで、女性においては結婚や出産を機に仕事を辞めるケースが多く、25歳を超えると労働力率が低下するといった特徴がみられましたが、昨今、結婚や出産を迎える女性30代の労働力率が上昇しており、この点も女性の就業者数増に貢献しているものと思われます。

 社会の中で活躍する女性が増えてきているのは喜ばしいことではありますが、一方で、共働き世帯においては家事、子育ての負担が女性に集中しやすいなどの問題が根強く残っています。この問題の解決には、家事や育児をアウトソーシングできる環境を整えることです。家事代行業や保育施設、ベビーシッターなどのサービスを利用するのも良いでしょう。ただ、できれば身近なところで助けてくれる人がいればと思う方も多いのではないでしょうか。身近な人といえば「親」。最近では、親世帯と子世帯がスープの冷めない距離に住む”近居”が人気のようです。

 静岡県内の持家所有者で高校生以下の子どもを持つ女性を対象としたアンケート調査では、親世帯との住まいの距離間と、心の距離や意識、満足度の関係について調べています。親世帯との住まいの距離間により、子育てや家事の依頼のしやすさはどのように変わるのでしょうか。

 まず、「自分の親に気軽に子どもの世話を頼めるか」についてたずねたところ、全体では「とてもそう思う」が36.6%、「まあそう思う」30.1%で7割近くが自分の親には依頼しやすいと考えているようです。中でも、二世帯同居・隣居または近居である場合は「とてもそう思う」「まあそう思う」の割合が8割を超えています。一方で、「夫の親に気軽に子どもの世話を頼めるか」と、”夫の親”に置き換えた場合は、「とてもそう思う」が6.5%、「まあそう思う」が29.0%と低くなり、自分の親への依頼よりもハードルが高くなることがうかがえます。ただ、夫の親においても住まいの距離が近いほど、「とてもそう思う」「まあそう思う」の割合が高く、自分の親であっても、夫の親であっても距離が近いほうが、親のヘルプを得やすい状況にあるようです。

■自分の親に気軽に子どもの世話を頼める
 

■夫の親に気軽に子どもの世話を頼める
 

 また、「親に育児や家事を頼っているか」についてもたずねています。こちらについても親との距離が近いほど頼っている(「とてもそう思う」「まあそう思う」)割合が高くなっています。

■自分の親に育児や家事を頼っている
 

■夫の親に育児や家事を頼っている
 

 少し離れた場所に親世帯が住んでいる人の中では、「親がもっと近くにいればよいのに」と感じている人も少なくありません。例えば「子どもが体調不良など緊急のときに相談したり協力してほしいと感じる」、「親の具合が悪くなった時に通える距離がよい」、「子供の行事を見せてあげたり、一緒に食事や日常の会話を楽しみたい」などの声が挙がっており、親世帯、子世帯が互いに助け合いながら生活できる距離間が求められているようです。


データ:二世帯住宅に関するアンケート(株式会社トムス調べ 2019年7月)
※調査対象:静岡県内在住の持ち家所有者かつ高校生以下の子どもがいる女性(n=93)