住宅制度

住宅瑕疵(かし)担保保険制度 ~ウチの業者さんは加入してる?~

執筆者
静岡県建築住宅まちづくりセンター 営業部長 齋藤 明

家を建てた後にもトラブルが起こる!?

[住まいの欠陥修理で消費者保護]

 自らの住まいを手に入れる機会というものは、一生の中で何度もあるものではありません。一度でもあれば、それは「夢のマイホームを手に入れた人」となり、幸せな話となります。何度も経験することではないのであれば当然、手にする前も後も「分らない事」「不安な事」ばかりです。このため住まいの取得に関係するトラブルは非常に多いのが実情です。
 近隣住民との間、親族との間、住宅会社や工事業者との間など、それぞれの間に発生する多種多様なトラブルが見受けられますが、その中で住宅会社・工事業者との間に発生するトラブルの中では、「修理」に関係することが多くあります。「雨漏りがした」「排水管が詰まった」「外壁にひびが入った」「基礎が沈み家が傾いてきた」等々。こうした住まいの瑕疵(本来あるべき性能になっていない状況。欠陥)に対して、住宅会社・工事業者に修理を求めるが、なかなか修理に応じてくれなかったり、または業者が倒産して、建築主が困ってしまうケースもあります。そうした建築主、つまり一般消費者の方が被害に合わないように保護しようとするのが「住宅瑕疵担保責任保険」です。

[業者が修理費用を保険で確保]

 保険制度ができた背景は、「住宅の品質確保の促進に関する法律」(略称・住宅の品確法)により、建設業者や住宅の売り主(宅地建物取引業者)は「新築住宅の主要構造部分の瑕疵について、10年間の瑕疵担保責任を負う」ことが規定されていますが、構造計算書偽装問題を契機に、建設業者や宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を十分果たすことができない場合、消費者が非常に困る状況に追い込まれてしまうケースが表面化しました。 そうした状況を避けるため、建設業者や宅地建物取引業者には、瑕疵修理のお金を確保しておくため、保険を掛けるか、一定の金額を法務局に預ける供託して、消費者を保護するよう「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(略称・住宅瑕疵担保履行法)で義務付けています。 つまり何らかの原因で瑕疵が発生し、建設業者や宅地建物取引業者が修理をする場合、修理の費用が保険や供託金で賄えるのであればスムースな修理工事が行え、消費者に負担がかからないようにしようとするものです。
 保険制度では、建設業法で規定されている建設業許可業者(建設業を営むための営業許可。建築工事では請負金額が1,500万円未満、木造の住宅では延べ床面積が150㎡未満の小規模工事であれば建設業許可を取る必要はない)また建売を行う宅地建物取引業者が保険の加入を義務化しています。このため建設業許可の取得が必要ない業者、例えば町場の大工さん等には保険への加入義務はありませんが、建設業許可のない業者が加入できる任意の保険制度もあります。 また、瑕疵の対象となるのは、屋根・外壁・柱・梁・床・基礎などの構造耐力上主要な部分や雨水を避けるための部分に支障が生じるような瑕疵が対象で、壁紙が剥がれたとか、排水管が詰まったといったもののほか、台風などの自然現象や土地の沈下など建物自体の瑕疵でないものも保険の対象となりません。 
 保険の期間は、住宅の品確法と同じ、建物の引き渡しを受けてから10年間で、修理費用のほか、調査費用や工事期間中の仮住居・移転費用も認められ、修理費用から10万円の免責費用を差し引き、その80%が修理を行った建設業者に保険会社から保険金が支払われます。

[契約時に保険加入の確認を]

 「住宅瑕疵担保責任保険」は、瑕疵責任を負う建設業者、宅地建物取引業者の修理費用の確保が主な目的ではありますが、それだけではありません。 本来、消費者の夢であるマイホームの品質が正しく工事がされ、引き渡し後も、瑕疵が生じないことが一番です。そのための保険による措置も行われます。 「工事中に第三者による現場検査」が行われます。この工事中の住宅・リフォーム紛争処理支援センター(電話0570-016-100)は電話で無料相談ができ、第三者による検査は非常に重要なことなのでで、一つの大きな安心材料となります。 また、瑕疵の修理責任を負う建設業者や宅地建物取引業者が倒産した場合でも、10万円の免責金額を除いた修理工事費用の全てが建築主に支払われます。さらには万が一、建設業者や宅地建物取引業者とトラブルになっても、住宅・リフォーム紛争処理支援センター(電話0570-016-100)に電話で無料相談ができるほか、専門の紛争処理制度(あっせん、調停、仲裁)が1万円で利用できます。
 本来であれば、やっと叶ったマイホームであれば、何のトラブルもなく快適に過ごしたいものです。しかし、単品生産である住宅では、引き渡しを受ける時点では、瑕疵が生じるかどうかは分らないのが実態です。何年か住んでから雨漏りが生じたケースなどがあるのです。
 素敵なマイホームを手に入れようとする時には、瑕疵が生じた場合のことも予測して、契約時にはなからず「瑕疵担保保険に加入しているか」または法務局への供託を確認するとともに、保険の対象とならない工事の修理年限などの対応も確認し、契約事項に盛り込むようにしておきましょう。大切なことです。