建築・間取り

大切な建築主との信頼関係

執筆者
建築士事務所協会 会員  山梨一級建築設計事務所 山梨一正

建築主と設計者の信頼関係

 あらゆる関係の基本は、信頼だと考えています。例えば、医者と患者、夫婦、親子、恋人同士でもお互いが信頼しあっているからこそ、良い関係が保たれているのではないかと思います。
 私的な事で恐縮ですが、数年前にある手術をしました。術後に、先生から言われたのはただ1つ!病気の事は忘れて、検診だけは忘れずに!でした。先生の言葉を守り、検診は確実に、予約時間はしっかり守る姿勢を患者としては、当たり前ですが今も変わらず守り続けております。そこは、大学病院でしたので、数年経つと移動があり主治医が変わります。カルテを見ながら、引継ぎをした先生も当初の状態から現状を詳しく説明をしてくれます。現在は、3人目の主治医ですが、私の先生を信頼している気持ちが伝わるのか、いつも笑顔で、丁寧に優しく 診察をしてくれいます。一病息災といいますか、今ではすこぶる健康で快調です。建築主と設計者の間にも同じ事が言えます。 

信頼関係を築くのに必要なこと

 納得して頂けなければ、いつでも契約解除して下さいが私のポリシーです。信頼を頂けなかった、不満がある、その様な状態では意思疎通は不可能です。意見の食い違い、思い違いは当然ありますよ。じゃあどうする、こうする、これは止める、他に方法は無いか?これは趣味ではない。等など、少しでも良い建築物を創り上げる為、建築主の理想を詰め込む為、設計士として、譲れる所は譲り、譲れない所、曲げられない所はご理解して頂くまで話し合う。 
 そうは言っても、過去に失敗談はありました。飛び込みで、私共の作品の広告を見て、「こんな家を建てたいのです!」といらっしゃいました。設計事務所は比較的、ご紹介等で、相手様の何かしらの事前情報をキャッチしているケースが多いのですが全くの初対面で、そのようなベースもなく、とり合えずヒアリングをさせて頂き、現地を見せてもらいました。
 当時の計画はお子様の入学を期に移転新築の予定だそうで、建物完成時期が限られていました。お互いに、持っているイメージを探り探りの状況でしたが、まずたたき台のプランをヒアリング資料に基き作成する事になりました。設計する方は、平面計画の時点で断面・立面もイメージ出来ているが、先方様も理解をしていたかどうか?たたき台なのだから、自由に遠慮なく意見を出し、疑問点を言ってくれると思い込んでいた。希望を言うタイミングが先方様には分からなかったか、それをこちらが引き出せなかった。たたき台がプラン確定だと思われてしまった節があった。後に反省を含めて考えてみると、こんな要因があったのではと想像していますが。ここに問題があったのです。設計事務所の仕事の流れや方法がきちんと伝わっていない結果でした。

成功の秘訣

 情報化時代ですから、ホームページの作品を見て訪問するケースも今後どんどん増えるでしょう。どうぞ、皆様遠慮なく、質問疑問を投げかけて下さい。お互いの信頼関係の構築こそ、家創りの成功の秘訣ですから。