住宅制度

住宅性能表示制度 ~いい住宅って一体何?~

執筆者
静岡県建築住宅まちづくりセンター 営業部長 齋藤 明

『いい住宅』とは、一体どのような住宅なの?

[住宅の持つ性能]

 まずは「建築主の希望にあった住宅」ということになるでしょう。その「建築主の希望」は、家族の生活スタイルにあった間取りであったり、最新の設備機器が備わっていることだったり、住宅のデザインが気に入った、といった点などに加え、建築費用を含めて判断されることが多いのではないか、と思います。見た目や使いやすさ、費用だけでは見るべきポイントが見落とされてしまいます。目に見えない「性能」という見方が加わることで本当の判断ができます。
 住宅をはじめとする建築物は、建築基準法という法律を最低限の基準として建築されます。でも建てる人の希望は最低限で満足することではありません。「この住宅は地震に強いのかしら」「省エネになっているのかしら」「バリアフリーに配慮されているかしら」「給排水管などの清掃や修理がしやすくなっているかしら」などが「住宅の性能」と言われても目に見えにくいもので、一般消費者の方にとって判断しにくいものです。ではどうやって判断するか、ですが、性能を目に見えるようにする、いろいろな性能についてランクをつけることができます。これが「住宅性能表示制度」です。

[住宅の強さなど10分野で評価]

 平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき開始された制度で、住宅ごとに性能を国登録の「住宅性能評価機関」が、国の基準に従って10分野でランク分けし、その住宅がそれぞれの分野でどのランクに位置づけされるか、表示されるものです。評価書には、設計図で審査する「設計住宅性能評価書」と、工事の途中や完成した時の現場検査を基にした「建設住宅性能評価書」の2種類があり、それぞれ法律に基づくマークが表示されます。

[法の義務付けはないが、住宅の性能を知る制度]

では、どのような性能を評価するのでしょうか。
◇構造の安定◇火災時の安全◇劣化の軽減◇維持管理への配慮◇温熱環境(省エネ)◇空気環境(有害物質)◇光・視環境◇音環境◇高齢者等への配慮◇防犯に関する10分野の29事項から成り立っています。
 例えば、「構造の安定」といいますと、柱や梁・主な壁・基礎などが、地震・暴風・積雪などにどの程度耐えられるか、等級により評価します。併せて基礎や地盤に関する情報も表示します。「高齢者等への配慮」に関しては、年をとったり怪我をしたりすると、移動などが負担に感じられ転倒などの事故にあったり、車いすを使用する時などに必要なスペースが確保されていないと使いにくくなるため、これらに配慮したバリアフリーに対応が出来ているか、などを評価します。評価された事項は等級や数値などで表示され、分野によって違いますが2~5段階にランク分けされます。等級は数字が大きいほど性能が高いことになりますが、性能の数値が高いことが直ちに住む方の全てに最適なものになるとは限りません。生活のスタイルや工事費用、地域の気候・風土、デザイン、使い勝手などによって、性能の組み合わせを選択することが重要です。内容を十分検討しないで等級が高いものや数値の良いものだけを過度に要求したりすることは合理的とは言えません。どの程度の等級を目指す住宅にするかは、建築会社または建築主が選択していくもので、法律で「○○等級でなければならない」といった規定はありません。また、この制度は、法律に基づいた制度ではありますが、評価を受けることは義務付けではありませんし、評価を受けるための費用も必要で、建設費用にも影響してきます。
ただし、住宅の性能が数値化され一般消費者にとって「いい住宅」を取得するための一つの手段となります。