建築・間取り

間取りは家族みんなで!

執筆者
鈴木 元一朗(グランドコンパス)

 リビング内階段がもてはやされた。メリットは家族の顔が見えること。家族の動線が交わる仕組みを間取りに担わせることでコミュニケーションがおこるという戦略である。気分の良い時も悪い時も家族の顔を見る「ただいま」「お帰りなさい」「行ってきます」「気をつけて」子供の顔色を伺う、親の戦略である。ところがこの戦略が裏目に出ることを忘れている。想定外と言うのか。

 思春期の娘さんにしてみれば、父親のだらしない姿を目にしてしまい、幻滅する材料になってしまうのです。夏場のパンツ一丁、ビールを飲んだ時のゲップ、爪楊枝での食後の歯間掃除、寝そべりながらの
TV視聴、休みの無精ひげ、気を許す場所でついついの行為なのですが。ダメおやじ、臭いおやじ、キモイんですけど、ありえない、これでは友人も気軽に呼べないとリビングから早々と立ち去る娘。
 息子も友人を呼びづらい。いちいち母親の監視の目にさらされる。あの友人はどうのこうのと評論され、趣味悪くないだの挨拶ができていないなど彼女を批判されたら、たまったものではない。
 いつの間にか戦略のはずが、戦いに突入していまいます「うるさいな」「うぜぇ」と。
 思春期を迎える前のお子さんの場合でも、勉強している横でテレビをつけてしまい、子供の集中力を切ってしまったり、邪魔をしていまい、挙句の果ては「自分の部屋で勉強しなさいよ、そのために家を建てたんだから」と子供部屋に追いやってしまう。本末転倒ですね。子供に限らず、自ら閉じこもるのは好きですが、閉じ込められるのは嫌いです。

 リビング内階段のデメリットは、階段が煙突効果となり、冬は寒い風が2階から降りてくる、暑い夏はなかなか部屋が冷えない。火事の際には煙や火の回りが早いとも聞く。

 流行り廃りで家を設計しないとは願いますが、是非お子さんも交えて間取りを考えてみましょう。間取りを決めていく中での家族のコミュニケーションが大事です。お前のために、子供部屋を作るために、家を建てたんだという押しつけは起きないですね。家を建てる前に家族の動線を交えてみましょう。リビングが家族を集める、子供部屋が子育てをする、家というハコにそこまで求めないでください。
 一方で日々目にするものは心理的に良い影響力を及ぼすことはあるでしょう。TVの後ろに本棚を置くとテレビを見ているようで本を見ることもあり、読書に抵抗感がなくなる可能性はあります。我が家ではそうでした。会社では経営理念や目標を掲げているのも壁管理として定着していますよね。