土地選び

住宅用地を選ぶ際の注意点(都市計画法等編)

執筆者
公益社団法人全日本不動産協会会員 クリエイト・ジャパン浜松株式会社 岡田樹義

「市街化区域」と「市街化調整区域」

 まず土地には都市計画区域が定められています。大きく「市街化区域」(計画的に市街化を進める区域で住居・商業・工業等12の用途地域が定められています)「市街化調整区域」(市街化を抑制する区域)「非(未)線引き区域」(区域区分が定められていない都市計画区域)に分けられています。工業地域や準工業地域でも住宅は建てられますが、将来近隣に適法で工場等が建つ可能性があります。近隣商業地域や商業地域では建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)容積率(敷地面積に対する建物の延べ床面積)高さの制限が緩和されていて敷地の南側に大きく高い建物が建ち日当たり等が阻害される可能性が有り住環境としては適していない場合が多くあります。

狭い敷地への建築時の留意点

 狭い敷地に3階建ての住宅を建てる場合は第2種中高層住居専用地域等北側斜線制限のある区域だと北側の高さに斜線制限が加わり北側いっぱいに3階の建築ができなくなり間取りに苦労することがあります。狭い敷地で3階建てを建てようとするには、北側斜線規制のない第Ⅰ種住居地域や第2種住居地域・準住居地域・近隣商業地域で土地を探したほうが良いでしょう。

安価な市街化調整区域には注意

 市街化調整区域では比較的土地の価格は安くなりますが基本的に市街化を抑制する区域のため農地法や都市計画法の許可が取得できないと建築できません。又、インフラが整備されていなかったりして自然災害に弱い部分も多く見受けられますので注意が必要です。

災害に弱い土地なのかの確認が必要

 次に土砂災害・浸水被害についてですが、最近は地球温暖化の影響もあると思うのですが、〇〇年に1回の自然災害が毎年のように各地で起きており住宅地も大きな被害を受けています。特に以前は田や蓮田だった場所が宅地化されることによって雨水の浸透場所が減り、豪雨時に一気に側溝や水路に雨水が集中します。結果、許容範囲を超え床下・床上浸水を引き起こしてしまいます。山の傾斜地が近い場合や河川沿いでは土砂災害にも注意が必要です。宅地選びにはその地域の状況を知ることが大変重要です。永く住んでいる人に地域のメリット・デメリットを事前に聞いてみましょう。現地で周囲の宅地が道路より必要以上に高く盛土されていれば浸水について確かめてみる必要もあります。役所で浸水被害記録を調べることも可能ですし、ハザードマップも参考になります。

地盤調査の重要性と確認方法

 地盤についても事前調査は必要です。土地の売買契約後なら建設会社で地盤調査を行い、地盤の状況や補強工事が必要か確認することができますが、通常残念ながら契約前だと地盤調査が済んでいません。事前に調べるにはGIS静岡県統合基盤地理情報のHPで「地質情報や土砂災害・地滑り危険個所・埋葬文化財(遺跡)・津波関連」等情報収集が可能です。又、地盤ネットのHP上「地盤カルテ」では、現在、住所等を入力するだけで、改良工事率、浸水リスク、地震による揺れやすさ、土砂災害危険リスク、液状化リスクの5項目の地盤・災害リスクが簡易ですが無料で判定できます。

がけ付近の土地の場合の留意点

 次にがけ付近の土地についてですが、静岡県建築基準条例第10条(がけ条例)で崖の高さが2mを超えるがけの下端からの水平距離が崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築する場合は、条件に応じて安全な擁壁を設けなければ建築できない場合があります。特に崖が崩れかけていたり、大きな亀裂が入っていたり、雨水や地下水がにじみ出ている場合は専門家に調査依頼することをお奨めします。2m以上の崖に擁壁を施工するとなると予想外の費用が必要になります。

まとめ

 土地購入時には、売買契約前に宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。「登記事項」から「インフラの状況」「都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限」契約の解除や損害賠償・瑕疵担保責任等「取引条件に関する事項」など多くの項目があります。不動産を取得しようとする人があらかじめ知っておくべき最小限の事項を列記したものなので、説明を良く聞いて、十分理解した上で土地の購入を決定して頂くようお願い申し上げます。